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Written by DMN事務局
on 3月 25, 2022

 

DMN Design Management Report

グンター・パウリ氏が語る

《ブルーエコノミー》という人類のイノベーション

自然界から着想するテクノロジーとビジネスモデル 【後編】

 

グンター・パウリ氏が語る《ブルーエコノミー》という人類のイノベーション【後編】

自然界から着想するテクノロジーとビジネスモデル

 

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2010年11月8日開催/於:六本木アカデミーヒルズ49

 

グンター・パウリ氏が語る

《ブルーエコノミー》という人類のイノベーション

自然界から着想するテクノロジーとビジネスモデル

グンター・パウリ氏The Global ZERI Network創立者・代表者

 

Part 2 ブルーエコノミーのさまざまなケーススタディ

 

新風力発電・ウィンドベルト

 これからケーススタディを紹介しましょう。現代世界で最も素晴らしい発明の1つが、Shawn Frayne氏が発明した風力発電機「ウィンドベルト」。彼は、被災を受けたハイチにいたとき、どうしたら発電できるか、と考えていました。そのとき、風で揺れるテントを見ていてウィンドベルトという風力発電機を思いつきました。ウィンドベルトは、フレームの内側にプラスチック製のラインを張り、そのラインの両端に磁石を取り付けた構造になっています。風が吹くとラインが振動して、磁石がワイヤーコイルの中で動いて電気が発生するものです。このプロジェクトは電池業界の革命になるでしょう。

 残念ながら、彼はアメリカでは資金調達ができず、香港に移りました。香港では3回プレゼンして、その場で会社の40%の資金調達ができました。アメリカの企業はグリーンバッテリーに投資しているので、ウィンドベルトに投資しませんでした。なぜなら、ウィンドベルトが普及するとバッテリーがいらなくなるからです。

 

温度差と声の圧力による発電

 ここに携帯電話がありますが、真ん中にある白い箱状のものが発電システムです。この携帯電話を体に近づけると、この発電システムで発電します。体温は36度で、外気温はそれよりも低いです。気温差が3度以上あると、このデバイスで発電できますから、体に近づけておけば、常に携帯電話を待機状態にして充電できます。

 電話がかかってくると電気を消費しますが、そのときには、ピエゾ・エレクトリック・ジェネレーターで発電できます。これは声の圧力で発電する小さなデバイスです。より高価なものは、聞くときの声の圧力でも発電することができます。

 大手電気メーカーは、バッテリーで儲けています。それはニューグリーンバッテリーと呼ばれており、寿命が長いものです。業界としては、当面それで儲けたいと考えています。しかしながら、グリーンバッテリーといってもグリーンではありません。汚染が少なくなっているだけです。新しいイノベーションの導入が進まないのには、そのような理由があります。

 

送電塔の風力発電

 送電塔は、風の影響を受けやすく、毎年いくつかは転倒しています。その送電塔の中心部に縦方向に3つのウィンドタービンを入れて発電することを考えました。発電だけではなく、それによって鉄塔の耐久性も高められます。このような発電できる送電塔を12000個設けることができれば、原子力発電所1基分に相当する電力を供給できます。このケースでは、建設期間は半年、コストはキロワット当たり50セント。原子力発電と比較すると設置期間は1/20、コストは1/8になります。インド政府は、この送電塔の風力発電を採用し、コンソーシアムを作って計画を進めています。

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波を見つけて乗る戦略

 ブルーエコノミーの戦略は、サーファーの戦略と同じです。サーファーは自分で波を作るのではなくて、よい波を見つけてサーフィンします。起業家も波を作る必要はなく、よい波のある場所を見つければいいのです。

 中心部で変革が起こることはありません。中心部とは保守主義の中心であり、そこにパワーがあります。変革というのは、その人たちが力を失うことです。我々としては、中心部ではなく周辺部に行くように起業家に薦めます。渦巻きの中心にいると、あっという間に下のほうへ引き込まれます。周辺部分は波立っているかもしれませんが、その波に乗ることができるからです。

 

シロアリの巣を真似る

 このシロアリが作った素晴らしい構造物を見てください。サバンナ地帯にあるシロアリの巣「蟻塚」です。この山のように盛り上がっている蟻塚は、気温を調整することができ、湿度も温度も年中ほぼ同じです。土でできており、その土は熱を吸収します。

 蟻塚の地上に出ている部分は数メートルですが、地下には数十メートルのトンネルがあり、その下には地下水があります。暖かい空気が上方部に出て行くと、下の方が真空状態になり、湿った土によって冷やされた空気が蟻塚に入り涼しくなります。

 この蟻塚の構造を、学校の校舎に適用してみました。この校舎には煙突があって、暖かい空

気が上方に抜けて、下から外気が入ってきます。夏には、暖かい空気が上に抜け、下にある冷たい空気が入って気温が下がります。冬は、冷たい空気が地中で暖まって入ってきます。

 30分に1回換気されますから、学習能力が上がります。今は、省エネのために建物を密閉状態にするおかげで、風邪が蔓延します。しかし、この校舎では、誰かがくしゃみしても、すぐに病原菌は外へ排出されます。また、この構造によってエネルギーを節約できます。

 

25年保証の新型給湯器

 これは25年保証の給湯器です。日本の給湯器メーカーで25年保証を出しているところはありません。25年も耐久性がないからです。太陽光給湯器でも最長で5年保証くらいです。この給湯器は、コストは2割増しになりますが、25年保証なのです。暖かい空気が上にあがる物理の原理を利用しています。コロンビアで発明されました。現在、7万台普及しています。インドネシアのカリマンタンに工場があり、2つ目の工場はガーナにできます。従来品より耐久性があり品質が高いということで、これはイノベーションと言えるしょう。

 

渦巻きを利用した浄水器

 次の事例は私のお気に入りで、渦巻きを利用しています。汚染された河が清らかになるのはどうしてか、というと水には素晴らしい機能があり、空気を出し入れすることができるからです。空気を水の中に取り込むときに好気性のバクテリアを刺激することになります。空気を外に出すときには逆に、嫌気性のバクテリアを刺激することになります。そのように空気を水の中に取り込んだり、出したりして水を浄化しているのが河なのです。水には渦巻きが発生しますが、それにも汚染を浄化する役割があります。それは流体力学に従っています。航空宇宙、F1レース、防衛業界、銃の弾丸においても流体力学を使います。

 スウェーデンにいる友人が、河の浄水機能にヒントを得て、流体力学を用いた新たな浄水器を発明しました。内側にある卵のような形をした物体で渦巻きを作り出します。その力によって、内向きのエネルギーを作り出して、水の中に含まれている不純物を真ん中に凝縮します。それらの不純物をノズルから吸収して、汚染を除去する仕組みです。

 そして、それ以外の水は、次のタンクへ移動して、同じことを繰り返します。結果としてフィルターを使わずして浄水できるのです。フィルターがないので膜が必要ありません。重力を使っていますのでポンプも不要です。この装置はすでに現実的に機能しており、アメリカのFDA(食品医薬品局)の承認審査も終わっています。

 

コーヒー豆のビジネスモデル

 私は、チドというジンバブエの女の子を養女にしました。彼女は父を知りませんし、7歳のときに母を亡くしました。孤児です。7歳の若さで家族を養わなければなりませんでした。彼女は学校をあきらめてピーナッツを売っていました。12歳になったときに、キノコの栽培方法を私の財団経由で学びました。それから彼女は、その方法を使って「農業によって自給自足できる」とシングルマザーや孤児たちを説得して行動を起こしました。

 実際、12ヶ月前に活動を開始して、コーヒー豆をアメリカに売っています。コーヒー豆を栽培し、今まで廃棄された部分を用いてキノコを栽培しています。これで食料の安全保障が保たれます。廃棄物を利用する段階で雇用を創出します。女性が雇用を確保して食料を手に入れれば、虐待に堪え忍ぶ必要もありません。虐待が止まればエイズも止められます。自分たちで食糧を生み出すというビジネスモデルが、好循環を生みます。競争力のあるビジネスモデルであり、継続性があります。

 現在、コーヒー豆を販売したお金を使って、女性の能力開発、雇用促進を行っています。チドは現在、2500人の女性たちのトレーニングをしています。すべてのコーヒー豆が、同じような方法で使用されれば5000万人の雇用を生み出せます。その廃棄物でキノコを生産すれば、1600万トンの食料を生み出せます。それは世界の漁業収穫高の半分に及びます。紅茶、とうもろこしなどの廃棄物でも同様のことができます。使っていないものを有効活用するだけで、1億トンもの食料を作り出せるのです。それがブルーエコノミーです。2009年には、これと同じビジネスモデルを使って、コロンビアだけで104の会社を設立しました。

 

100のビジネスモデル

 私の提案は、実現可能なものです。本日は10のモデルを紹介しましたが、さらに90のモデルがあります。私は、本田宗一郎氏から複数の知恵をいただきました。その中でも一番感銘を受けた言葉は「現実逃避するために夢を見る人もいる。現実を永遠に変えたいために夢を見る人もいる」というものです。

 ブルーエコノミーの背景にある考え方にふれれば、皆さんも現実を変えていくことができます。今年の2月以降、毎週、インターネット上で新しいビジネスモデルを紹介しています。20121月までには、すべてのビジネスモデルをオープンソースで紹介します。また、ダイヤモンド社から『ブルーエコノミー』という書籍が発売されます。

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「ブルーエコノミーに変えよう」

100個のイノベーションで、10年間に、1億人の雇用をつくる

(ダイヤモンド社刊)

 

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Q&A

Q:最も豊富な無料のエネルギー資源は重力ということですが、その使い方について教えてください。

パウリ:重力だけでセミナーができるぐらい使い方はたくさんあります。ひとつはビルにおいて、重力を活用する方法です。このビルは52階ですが、多くのスティールの梁があり、それらの梁がビルを支えるために動いています。その梁のスティールのつなぎ目に水晶を入れて、発電することが可能です。梁に挟まれた水晶が押されることによって発電します。マイクと同様の原理です。未来都市のエネルギーは、このような重力の力によって生み出されるでしょう。クリスタルが世界中で必要になりますが、それをシルクで代用することが可能です。ナノサイズにしたシルクで発電できます。ビルではなく一戸建てでも、同じような発電方法が可能で、6000ワットぐらいは賄えるはずです。太陽光発電でなく、より創造的なエネルギー創出を考えるべきだと思います。まず必要なのは、本田宗一郎氏や松下幸之助氏のような創造的なエンジニアを育てることでしょう。

 

Q:モビリティについては、ブルーエコノミーではどのように考えていますか。

パウリ:まず、自動車のない世界を考えることでしょう。かなりの数のアイデアがあります。飛行船も効率的な輸送手段ではないでしょうか。また、現在の内燃機関エンジン以外のものを考えるべきでしょう。また、エンジン内での燃焼を完全にすれば汚染にはなりません。先ほどの渦巻きを利用した浄水器のようなものを考えてもいいでしょう。エンジン形状に縛られずに考えれば、いろいろなアイデアが生まれます。

 

<参考ウェブサイト>

ZERI
http://www.zeri.org

●ゼリ・ジャパン(ZERI JAPAN)
https://www.zeri.jp

ブルーエコノミー
https://www.theblueeconomy.org

(文責:DMN/編集部)


 

GUEST PROFILE

グンター・パウリ氏 Gunter Pauli

The Global ZERI(Zero Emissions Research Initiatives)Network創立者・代表者。
1956年ベルギー生まれ。聖イグナチオ大学経済学部卒業。91年、廃棄物をつくらないゼロ・エミッションの考え方を導入した石鹸工場をベルギーに建設。その活動が世界の注目を集め、94年には国連大学学長顧問としてゼロ・エミッションを主導し、構想の実現に尽力。96年、国連開発計画(UNDP)とスイス政府の出資でThe Global ZERINetworkの前身であるZERI財団をジュネーブに設立。目的は「循環型社会」の実現。94〜97年、国連大学(東京)学長顧問。世界経済フォーラムにおいて「21世紀のリーダー」の1人に選出される。2010年、「ブルーエコノミー」を発表し、世界各国の政府、研究機関、市民グループなどと連携し、イノベーション事例をデータベース化しながら、ビジネス創造の実践活動を展開している。ブータンでは政府顧問をつとめ、「ブルーエコノミー」をGNH(国民総幸福量)の具体的な経済政策として導入。さらに、世界の子供たちのために、環境と経済のあり方を考えさせる教育にも注力している。

 

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