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Written by DMN事務局
on 8月 04, 2021

前回に引き続き、今回は横山いくこさんの講演の続きと、後半に行われたディスカッションの様子をレポートいたします。

 

ー横山いくこさんの講演(後編)ー

 

今後の展開について

 2012年11月に「無形文化財としてのローカル伝統工芸のオルタネティブな保存継承方法について」という会合を開催しました。これまで3年間やってきた南アフリカや藁細工のプロジェクトを含めて、疑問点、葛藤などについてディスカッションしました。北欧の国などでプロジェクトを主宰している人たちを呼んで、クラフトの話をしました。

 その中で、Katjaは、3Dプリンターなどのニューテクノロジーがクラフトの仕事に影響を与えるだろうと話していました。すでに家庭用の3Dプリンターもでており、日常生活に入り始めています。

 ユネスコが2003年から無形文化財の保存のためのコンベンションをしていますが、無形文化財には、生活文化の伝統や表現、口承文化も含まれ、祭事や伝統工芸のスキルなども含まれます。そのような動きによって、2000年代の後半には助成金団体が、無形文化財への支援を積極的にするようになりました。1回切りのプロジェクトではなくて、将来的に残る形で進めることに重点が置かれるようになってきました。

 

第一は家族を守ること

 伝統を失っている国の人間が、失っていない国のクラフトを守ろうというのは上目線の考え方だと思います。たとえば、南アフリカのおばちゃんたちは、より新しいものを作って、生活の糧にしたい、と考えています。それに対して、伝統を守りなさい、というのは通じない話です。上からの目線でお金を持っていって、よいものはなくさないほうがいい、と言うことはできません。それは、ギルトレス・コンサンプションに近いことかもしれません。

 ナミビアで地域活性化の活動している人から「新しいスキルを身に付けて家族を守ること。それが一番の喜び。伝統は余分ではないが第一のことではない」ということを聞きました。これは胸の痛い言葉で、そのような葛藤が常にあります。ただ、私たちがやっているプロジェクトは、美しい手仕事を世界のコミュニティにインクルードして一緒に元気になるということを目指しています。作り手として世界のマーケットで対等のレベルでやっていけるのだから、そのコーチをしているという感じです。そして、このようなプロダクトを持ち込むことで、消費のマーケットに刺激を与えられるのではないか、と考えています。

 たとえば、ストーリーベースをオルランディのところに持っていくと、50%マークアップする。プロジェクトの詳細を紹介して「あなたが一番お金を稼いだらおかしいでしょ」と説得すると、30%にマークアップを下げてくれました。

 また、Katjaは、デザイナーのロイヤリティを向上するために、50:50という活動をしていますが、それも流通への疑問点があるからで、デザインマーケットのエコノミーがどうなっているのか、という問い直しにもなっています。

 このように商品を作って価格交渉することで、制作費、材料費、輸送費、保険料などの原価について、具体的に実感できるようになってきています。

 

「社」のクラフトへ

 2013年2月に新しい助成金をもらって、Frontのストーリーベースのプロジェクトを続けるためにアフリカに行きます。おばちゃんたちはもっと仕事をしたいと言っており、もっと注文がほしいという状態です。実際は、月に10個も売れないので、そのへんを考えたプロジェクトにする予定です。

 このプロジェクトでは、注文どおりの製品にならない、などクオリティ・コントロールが大変だったりします。世界のマーケットで売りたかったら、クオリティ・コントロールをしなければなりません。おばちゃんたちは、自分たちが制作にかけている時間など賃金の感覚がないに等しい。将来的には、南アフリカだけで生産してディストリビューションもしたい。だから、今後はビジネストレーニング的な要素も入ったワークショップをします。

 現在、ディスカウント・カルチャーが、ものすごいスピードで進んでいて、それに流されないでものを作るのが難しい状況です。そういうときに「VIABLE」という状況を作っているのが重要になるのではないか、と考えています。衣食住のクラフトがあるのなら、これからは社会の「社」のクラフトがあるべきではないかな、と思ったりしています。

 

ーディスカッションー

川上:横山さんの講演にあったキーワードを振り返ってみたいと思います。クラフト・レボリューション、アウトソーシングなどの言葉が出てきましたが、その中にギルトレス・コンサンプションという興味深いキーワードがありました。

 

横山:エコ、サスティナブル、エシカルということはすでに前提としてあって・・・葛藤を含まないものはありません。どちらかを助ければ、どちらかに不利が生まれる、というように100%フェアであることは難しい。その中で、消費の仕方というのを立ち止まって考える。企業がエコだからオーガニックだから、ということを聞いても安心ではありません。ギルトレス・コンサンプションは、そこの所をもう少し踏みこんで考えましょうということです。皆の意識が高まってきたときに、作っていく側は、きちんと答えられるものを用意しておくべきです。

 

川上:ギルトレス・コンサンプションという言葉を聞いたとき、あえて罪悪感という言葉を使うぐらい、現代社会の消費がさまざまな課題を含んでいることにヒヤッとさせられました。

参加者:オランダで大学を出てデザイナーをしています。学生の卒業制作のほとんどがクラフトに関するものでした。オランダ人の生活をみると、小さい頃から家の改装の手伝いをして、人によっては溶接ができたりします。ハイレベルな技術が日常生活の中にあって、クラフトに対するギャップがありません。そのまま自分の1つの技術として活用できる環境があります。

参加者:リトアニアでフリーランスのデザイナーをしています。リトアニアは共産主義の時代があって、まだ生活にものづくりが残っている国です。首都のメインストリートでクラフトの土産物を買えるところです。選び方によっては質の高いモノもあります。ユーロとリトアニアの物価が両方とも存在していて、ユーロの物価に合わせた、ものづくりが始まったりしており、そこのところで矛盾があったりします。

 

川上:今、ユーロの話がでましたが、ミラノサローネで文化背景を前面に出したプロジェクトが登場してきたのが、ちょうどユーロが通貨として流通し始めた頃で、それが大きな転換期だったと思います。祖父母の時代を振り返って、新しい素材でそれを復元したりなど、自分たちの出自に目を向けるようになりました。EUという文化圏ができたところに、そのような動きが自発的に生まれました。

伝統的なものを存続させるためには、市場論理など、さまざまな課題があります。企業が入ることによって大きく変えられるのではないか、という希望もあったりします。しかし、その結果として生まれている現状を冷静に見ていかなければなりません。

 

横山:オランダのティヒラー・マッカムという有名な窯元の13代目社長に話を聞いたことがあります。社長は、2008年にデザインアート的なギミックデザイン・・・クラフトがアートになっているような一点物の高価な商品をミラノサローネに展示しました。そのときには、メディアの高い評価を受けたそうです。

私がティヒラー・マッカムを訪れたのは、その後の2011年で、社長は「あのプロジェクトは失敗だった。PR効果はあったが、あのプロジェクトは続けられない」と語りました。続かない理由は、ものすごく値段が高いからです。現在、ハイエンドなアートピースなどを販売していたセレクトショップの倒産が続いており、ギミックデザインのようなものが売れなくなっているからです。

スウェーデンのリサ・ラーソンさんは、日本で人気がある陶芸家です。手作りの工房で同じ場所で同じスタッフが1950年代から作っています。そのものづくりが評価されて人気が出ており、日本での売上が85%を占めています。あまりに日本で人気があって、その人気が落ちたときにどうなるのか心配していますが、当人は作るのに集中してあまり危機感がないようです。それに対して、ティヒラー・マッカムの社長は危機感を持っていますが、そのように情報を集めて現況を冷静に見ることも必要でしょう。

参加者:アメリカの画廊では、日本の竹工芸の一点物をコレクターに売っています。コレクターたちは、日本の手仕事の一点物を評価する目が肥えている。アート作品とプロダクトのラインはありますが、なかなか難しい。日本では使えるものとして販売するが、アメリカのコレクターは それをオブジェとして家に置く。アートピースとして高い値段で購入している。そのようにして竹工芸品が、ここ20年ぐらいアメリカのコレクターが集めるカテゴリーになっています。作り手側からうまくプレゼンして、マーケット側の意識を変えていくという方法もあるかもしれません

 

横山:デザインの商品になるか、アートピースになるか、というところでマーケットの仕組みが違います。本当にジレンマで、どうしていいのかわからないところがあります。ストーリーベースについては、いろいろな見方があって、予想外の結果でした。リサ・ラーソンさんもそうです。買う側がもう少しクリティカルになって目を肥やすことも必要でしょう。

 

川上:助成金については長期的な方向になっているのですか。

 

横山:現在では種が育っていくようなプロジェクトに助成金が出るようになっています。1970年代にスウェーデンの助成金で、スワジランドのガラス工場が作られました。その後閉鎖されたが、1990年代になってから、若い世代が復活させて成功させたという例もあります。何かネットワークのあるところから広げるということも考えられます。

参加者:横山さんは、EICでは若手デザイナーとコラボしていますが、そのメリットはどこにあるのですか。

 

横山:たとえば、Frontは有名だから選んだのではなくて、彼女たちのアプローチに共感を覚えて信頼してお願いしています。若手デザイナーのほうが考え方が近いということも理由の1つかもしれません。

 

川上:今日の話のなかで、保存の仕方ということがありました。文化の保存継承のなかで守りに入らないという姿勢が重要ですね。

 

横山:自分でアンテナをはって、ティッピング・ポイントを注意深く見るようにすべきでしょう。江戸文化の工房を訪問したときには、守りに入っているところもありました。もともとのスピリットなどを見直して、そのルーツをたどるということが大きなヒントになるのではないかと思います。

 

川上:今後の目標を教えてください。

 

横山:南アフリカにおける最終的な目標は、自分たちで受注して生産して発送するところまでやってもらうこと。こちらはマーケティングなどでお手伝いしていきます。

 

<参考URL>

●EDITION IN CRAFT

http://www.editionsincraft.com/

(文責:DMN/編集部)


 

GUEST PROFILE

川上典李子さん
デザイン誌「AXIS」編集部を経て1994年に独立、デザイン分野を中心に取材・執筆を行っています。2007年より、21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクターとして、3名のディレクターである三宅一生さん、佐藤 卓さん、深澤直人さんとデザイン展覧会の企画に関わっています。
各国での展覧会の企画にも参加しており、一例に「Japanese Design Today 100」(巡回中)やパリ 装飾美術館での「Japon - Japonismes, objets inspirés 1867 - 2018」のキュレーション、「London Design Biennale 2016」日本公式展示(鈴木康広氏個展)キュレトリルアドバイザー。
グッドデザイン賞の審査員をはじめ、デザイン、アート、クラフトに関するコンペティションの審査にも多数参加しています

横山いくこさん
M+アクティング・リード・キュレーター
2016年より香港在住。2020年開館予定の美術館M+のデザイン&建築チームリーダーとして収蔵作品の収集や開館展、企画展を準備中。1995年~2015年までストックホルムを拠点にKonstfack/スウェーデン国立芸術工芸デザイン大学のエキシビション・マネージャー(2004-2015)、及びフリーランスのキュレーター、ライターとして活動。「Found MUJI Sweden」監修(良品計画/2016)、「活動のデザイン展」共同ディレクター(21_21 DESIGN SIGHT/2014)、「Japanese Design Revisited」キュレーター(ヘルシンキ・デザインウィーク/2015)、「Vårsalongen」共同キュレーター(ストックホルム私立美術館/2008)、「ReShape!」アシスタントキュレーター(ヴェニスビエンナーレ/IASPIS/2003)、など。2000年より日本の雑誌、書籍に北欧を中心としたデザイン、建築、アート、ライフスタイルについて寄稿。共著に『リサ・ラーソン作品集』(ピエ・ブックス)。2008年よりデザインとクラフトのリサーチ&プロダクションを行う「Editions in Craft」を主宰。スウェーデン近代美術館友の会ボードメンバー(2008-2015)。

 

 

 

 

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