
こんにちは。mctの鶴森です。
皆さんはマズローの欲求5段階説をご存知だと思いますが、
進化論や生物学の観点から建て直されたピラミッドがあるというのをご存知ですか?
提唱しているのは、心理学者のダグラス・ケンリック教授で、マズローのピラミッド(欲求5段階説)との大きな違いは、「自己実現の欲求」が「繁殖(家族)の動機」に変わっているというところにあります。
ケンリック教授はマズローのピラミッドにどのような問題を見出したのでしょうか。
著書(邦訳「野蛮な進化心理学」白揚社、ダグラス・ケンリック著)の中で「マズローは、人間の一生において繁殖が持つ中心的な重要性を語っていない。さらに、ピラミッドの上位にある自己実現の欲求を非生物学的な欲求として上位に位置付けているが、人間に特有の行為と思われるからといって非生物学的と決め付けることは間違っている」というようなことを述べています。
そして そのような問題に対して、ケンリック教授は次の図のようにピラミッドを建て直しました。

出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3161123/ 画像を引用し日本語訳を追記
マズローのピラミッドとの違いは大きく3つのあります。
1.「頂点から自己実現の動機をなくした」
マズローは「自己実現」は生物学的な機能を持たないと考えましたが、ケンリックは人間の行動はすべて包括適応度(自分の遺伝子を未来に旅立たせるための成功度)を高める産物だという進化論の観点から自己実現にも生物学的な機能があると考えました。自己実現を極めた人は、歴史的にみればたいてい高い地位を得て、繁殖成功の確率を高めているといったことを例えに出し、自己実現を承認欲求の延長上の一部として位置付け、「自己実現の追求→他人からの高い評価が得られる→集団内での地位の確立につながる→より多くの異性とお近づきになれ、子供にごちそうを与えられる」といった機能的なメリットがあるとしています。
2.「頂点に繁殖に関する3つの新しい動機を加えた」
ピラミッドの上部は「自己実現」に変わって、「配偶者の獲得」「配偶者の維持」「子育て」の3つが置かれています。
理論的な背景には、生活史理論と言われる概念があります。
生活史とは、「生物学的経済」に関する理論であり、そこには動物の成長過程において限られた資源をいつどのように割り振るかについて常にトレードオフが存在するという前提があります。また生活史は大きく二つの局面に分けられ、ひとつは身体的努力(得た資源を自らの身体という銀行口座に入金する)、もうひとつは繁殖努力(入金した資源を固体の遺伝子複製に使う)で、さらに繁殖努力は交配と子育ての2つに分けられます。人間の場合は性的成熟期に達するのに時間がかかり、パートナー探しに数年を費やし、さらに自分のエネルギーを子育てに注ぐという特徴があります。
その考え方をピラミッドに適用し、生存や社会的つながりに関する動機が、配偶者を獲得するための下支えになっていて、それが今度は配偶者との関係維持の基盤となり、次にそれが子作りや子育てといった動機を支えているといった形にしています。
3.「動機を重ね合わせた表現にした」
マズローは高次の欲求を持つ芸術家などは低次の欲求を超然しているという考え方をしていましたが、ケンリックは「マズロー以降の研究からは、遅れて発達する動機は先行する動機に置き換わるのではなく、その上に形成されるという考え方が支持されている」という理由から、ピラミッドを重ね合わせることで、その時々の状況によって同時に存在する別の動機が選択されるということを表現しています。
ここまで、ケンリックのピラミッドをマズローとの違いという視点からご紹介してきました。
私自身の経験では、mctが実施したプロジェクト「Making New Things 〜アフターコロナ・ビジョニング」の中で新型コロナを通して人生が大きく変化した人たちに話を伺った際に「家族」に関する変化やニーズを強く意識している人がいて、テーマによってはケンリックのピラミッドを意識すると対象の理解が深まる場合があると実感しました。
一方、ケンリック教授の仮説では自己実現の欲求が承認欲求の一部として位置付けられていますが、フロー理論があるように純粋に創作活動に没頭している芸術家は承認欲求を意識しているわけではないと思います。またそのような意識/無意識のレベルの違いに加え、人間は生物学的な欲求だけではなく生まれてからの社会的な影響を受けて欲求が形成されるということも考えられます。そのように考えると、どちらか一方だけではなく両方のピラミッドが建てられた背景を理解した上で、あくまでも仮説として目的や状況に応じて参照することでよりうまく活用できると考えています。
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- Shinpei Tsurumori株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト

アフターコロナをテーマにしたmctの取り組み、「Making New Things 〜アフターコロナ・ビジョニング」。
5月のPJ始動から今日まで、多くのサポーター企業と共に
生活者のライフスタイルの変化と変化の先に求められるものを探ってきました。
アフターコロナの企業の方針選定を支援するビジョニングWSも無事終了し、
今後はサポーター企業以外のみなさまにもレポートの内容を共有するべく、無料のオープンセミナーを企画中です。
= Making New Thingsのアウトライン =
2020
5月 PJキックオフ
6月 リードユーザーインタビュー
7月 エキスパートインタビュー
8月 レポートアップ~PJ報告会
9月 ビジョニングWS

キックオフイベント(5月)
mctでも初となるフルリモートの試みとあって、試行錯誤の中で行なわれたセッションでしたが、多数の参加企業に恵まれ、盛況のうちに幕を閉じました。いまでは日常となってきているリモートイベントですが、当時は慣れないことも多かったなと遠い昔のように思い出されます。

リードユーザーインタビュー(6月)
国内インターネットパネルにてスクリーニングを実施。属性等、候補者特徴のバランスを見ながら、自由記述アンケートの内容をもとに有力な候補者をピックップし、最終的に5名の対象者にインタビューを行ないました。状況が状況だけにネガティブなエピソードも多くなるかと思いきや、意外にも「前よりも生活が快適になった」と主張する対象者が多く驚かされたのでした。

エキスパートインタビュー(7月)
アフターコロナ後の生活をしているであろうエクストリームユーザーへのリサーチ。国内・海外のデスクリサーチを実施しながら候補者をピックアップしていきました。「限界集落に住みながらフルリモートで働くプログラマー」「複数の職場や仕事に属しながら働くパラレルワーカーママ」など、先進的なライフスタイルを送りながらもコロナ禍の中でたくましく生活している彼らの価値観やマインドセットは今回のレポートの核となっています。

レポート(8月)
ちょうどオリンピックが行われていたであろう時期に、PJを通じて得られたインサイトや、そこから見える未来をレポーティングしていました。本PJによって発掘されたインサイトをご説明した上で、それらを「3人の未来人の日常生活(=フューチャーシナリオ)」として集約して描き、ご紹介しました。
*写真は「2025年の未来」を描いたフューチャーシナリオの1ページ

ビジョニングWS(9月)
トレンドレポートをもとに企業の方針選定を支援するビジョニングWSを実施。各サポーター企業ごとに、2h程度の時間を頂戴し、みなさんと共にアフターコロナの企業の在り方を考えました。4つの大陸(はじまりの大陸/学びの大陸/アイデアの大陸/希望の大陸)からなるmctオリジナルのオンラインホワイトボードを用いて、楽しみながらアイデアを考えていただくことができました。
活動を通じて
サポーター企業からは「面白かった」「新しい事業を考えるヒントとなった」とご意見をいただきました。同時に、大規模なフルリモートのプロジェクト運営は私たちmctにとっても学びになりました。オンラインでプロジェクトを実施することで色々な便利/不便は生じましたが、それ以上に「オンラインであることを活かして、プロジェクトの質を高める」ヒントがチラチラと見えており、これを機に弊社サービスを一歩未来へと動かしていければとも思っています。
次のフェーズへ
mctでは、Making New Thingsを通じて得られた気づきを活用し、
今後も引き続きアフターコロナの未来洞察を支援していきます。
さしあたって、ビジョニングWSの進化版PJとも言える、
クライアント様の業界・業種に沿ったアフターコロナの方針選定をサポートするメニューを企画中です。
ご質問やご相談はお気軽にお問い合わせください。
Making New Things 〜アフターコロナ・ビジョニング~
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- Natsuki Koizumi
mctでは、実際のリモートプロジェクトでの経験をもとに 、より使いやすいオンラインツールをセレクトし随時『mcTV』にてご紹介させて頂いております。
前回のVol.4では『直感的に・心地よくオンラインディスカッションを行う』をテーマにお送り致しました。ご覧頂けましたでしょうか。 ▶︎▶︎▶︎ 前回の動画を見る(Vol.4)
リモート環境下では情緒に関する情報が欠落しがちですが、感情や心の機微を伝えるツールとしてみなさまはどの様なツールをお使いでしょうか。
今回は、アメリカ初のビジネスチャットツール「Slack」についてご紹介いたします。
Slackは、お互いにメッセージを送信するという基本的な機能のほか、個性を表現し合うコミュニケーションが生まれるビジネスチャットツールです。
Slackが統合できるアプリは1500以上もあり、GoogleやOutlookメールとの連携も可能なため、ワン・ストップでご活用できる点も魅力となります。
ビジネスの場において、円滑なコミュニケーションとスムーズな業務遂行の実現に、ぜひご参考ください。
mcTV|Vol.5 【Slack】を使って社内外でコラボレーションを行う
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Vol.5 のご視聴ありがとうございました。
ぜひ引き続き、『mcTV』をご覧頂き、リモートプロジェクトの遂行にお役立て頂けますと幸いです。
なお、mctではオンラインツールの簡単な使い方レッスンを実施しております。
プライベートレッスンを設け、Zoom、Vimeo、miro、Slack、Remoといったツールに少しずつ慣れて頂く場を設けておりますので、ぜひお気軽にご活用頂けますと幸いです。
オンラインワークショップ実施のご相談も併せて承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
次回の『mcTV』もお楽しみに!

- Shoko Strang株式会社mct カスタマーサクセスアソシエイト

mctの未来探索プロジェクト、「Making New Things 〜アフターコロナ・ビジョニング」。
アフターコロナの未来で人々がどう変化するのか、
変化の先に何が求められるのか、そんなテーマをもとに発足し、サポーター企業のみなさまと共に進行中です。
さて、現在、多くの人が一部もしくは全部、リモートでの仕事を余儀なくされていると思いますが、
今回は、数年前に限界集落に移住し、フルリモートで仕事を続けているリードユーザのインサイトをひとつ、
ご紹介したいと思います。
地方移住とリモートワークが掛け合わさると、その先の未来で何が起こるのか。
今回ご紹介するのは、奥様が地方移住を夢見ていたため、
自ら積極的に会社と交渉し、数年前からリモートワークを始められたという経緯をお持ちの方。
リモートで働いていると、監視の目がないということもあり、
特に個人ワークの部分の仕事の進め方が本人の裁量に委ねられます。
※そのため、責任感の強い人でないとリモートワークは失敗する?
同時に、人の手が加わっていない田舎では、何かしたいと思ったら、意外と簡単にスタート出来てしまう。
今回お話を伺った方は、家の前の空き家を買い取って、ゲストハウスをつくられていました。
このあたり、都市部では想像できないですよね。
※画像はイメージです。
印象的だったのが、本業の息抜きの時間に、ゲストハウスの手入れをしていること。
9時から18時までオフィスで仕事、というスタイルからはいい意味で、かなりかけ離れた生活をされていました。
また、近くの農家さんから美味しい野菜をもらったり、自分で魚を釣ったりして、
その土地と深く関わりながら生活する中で、その地域に何か貢献したいという夢が生まれてきたという。
本業の時間とサイドワークの時間のミックス。本業を通して実現したい夢と、その地域に貢献したい夢のミックス。
その土地と繋がりながら、同時に、インターネットを介して遠くの仕事仲間とも繋がることで、
複数の価値が交錯していくことが一つの発見でした。
リモートワークは今後も続くでしょうし、都市への通勤が必要ないならば地方移住も進むでしょうから、
今回お話をお聞きしたような方は、アフターコロナの時代に、ますます増えていくのだろうと思います。
本ブログを書いている佐藤もフルリモートで働いており、
UXリサーチャーの本職の傍ら居住地の奈良を盛り上げる活動をしており、
とても共感しながら取材を楽しく視聴していました。
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インタビュー映像をご覧いただくには
「Making New Things 〜アフターコロナ・ビジョニング」では、サポーター企業を募集しています。
サポーター企業のみなさまには、すべてのインタビュー映像を公開しております。
mctの未来探索プロジェクト
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- Takeshi Sato株式会社mct
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