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Aug 17, 2015 01:00 コ・クリエーションとは何か? その価値とパターン

コ・クリエーションについては今日、積極的に語られています。しかし、コ・クリエーションには多くの意味があるため、それらの論議は混乱を招きがちでもあります。
たとえば、特定のツールやテクニックを使うことに対してコ・クリエーションという言葉を使う人もいます。同じ言葉をデザインリサーチの手法という意味で使う人もいますし、企業文化を形成するマインドセットとして使う人もいます。

私は、コ・クリエーションという言葉は、その3つのすべてでありえると思っています。
すなわち、ツールやテクニックの結集でもあり、デザインリサーチの取り組み方でもあり、企業文化を形成するマインドセットでもある、ということです。しかし、どこにどれだけの価値を見いだすかによって、それらが与える影響は変わってきます。

デザイン・開発のプロセスではここ10年から20年の間で変革が起こり、テーマの決まらない"あいまいな初期段階(fuzzy front end)"に時間がかけられるようになりました。これからの社会に必要なものを問い、探求する活動が行われるのが、まさにこの初期段階です。何がデザインできるのか、あるいは何を避けるべきなのかを、ここで決めるのです。あいまいな初期段階では、「人々のためにデザインする方法」、あるいは、「人々とデザインすることを考慮に入れてアプローチする」方法を取ることができます。デザインするにあたって、プロジェクトメンバーやデザイナーではない他の人々を自分たちのデザインプロセスに招き入れること、それこそが「コ・クリエーション」なのです。

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図表1:コ・クリエーションは、デザインと開発プロセスのあらゆるポイントで常に行われている

 

図表1の点が示すように、コ・クリエーションは、デザインと開発プロセスのすべてのポイントで行うことができます。しかし、すべてのプロセスにおいて「いつも行われている」とは限らないのです。

図表2では、デザインと開発のプロセスにおけるもうひとつの側面に言及します。ここでは、コ・クリエーションのプロセスで考えるべき3つのレベルの価値(マネタリーレベル、使用/経験レベル、社会レベル)が示されています。

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図表2:コ・クリエーションは、デザインと開発のプロセスにおけるさまざまなポイントで、異なる価値を生み出す

 

一番上のマネタリーレベルの価値は、ビジネスパーソンの間で、最も注目を集めてきました。この種のコ・クリエーションはお金を儲けることを目的にしていますが、必ずしもその企業と顧客を直接結びつける必要はありません。たとえば、クラウドソーシングを使って、顧客から商品、サービス、ブランドに対するフィードバックを得ることもできます。

使用/経験レベルの価値としてコ・クリエーションを使うのは、その企業が提供する商品やサービスを、人々のウォンツやニーズに、より見合っているようにしたいという気持ちからくるものです。結果的にリピート顧客を呼ぶことになれば、この種のコ・クリエーションは、金銭的な意味でも良い影響を与えることになります。

コ・クリエーションにおける社会レベルの価値は、長期的で持続可能な生活を目標とするものです。たとえば、「慢性的な病気を抱える人々のQOL(生活の質)を向上させるために、我々には何ができるのか?」といった、難しくて終わりのない疑問を掘り下げたりします。ここでは、専門家と一般人が密接に協力しあいます。この種のコ・クリエーションにおいては、専門家と一般人がダイレクトに関わり合うことが必要です。

図表2を見ると、マネタリーレベルの価値に重きを置いたコ・クリエーションは、マーケティング、セールス、ディストリビューションなど、デザイン開発プロセスの後期に起こりがちであることがわかります。使用/経験レベルを重視するコ・クリエーションは、デザインのプロセスで起こる傾向にあります。そして、社会レベルの価値を重視する場合は、デザイン開発のとても早い時期に始まって、デザイン開発プロセスの間もずっと続くのです。コ・クリエーションがデザイン開発の早い時期に起これば起こるほど、その影響は大きくなります。

図表2は、コ・クリエーションをどう適用するかにおいて、3つの異なるパターンを示します。「ツールとテクニックの結集」としてのコ・クリエーションは、商品やサービスのデザインが終わった後に、特定のツールやテクニックを適用することを指します。ブランドや、市場における新商品、新しいサービスに注目させる意味で、これは素早く、コストのかからない方法と言えます。

「デザインリサーチの取り組み方」としてのコ・クリエーションは、デザインにおいて参加型の方法を取ることに意義を置き、主に、発見とデザインを模索する初期段階に使われるものです。

「企業カルチャーのマインドセット」としてのコ・クリエーションは、あやふやなところから始まり、人々の生活に最も大きな影響を与える潜在性をもっています。もしも、すべての組織/すべての人々がコ・クリエーションのマインドセットをもつならば、それは非常に大きなインパクトを与えることでしょう。そのコンセプトは、全員が賛同するものではないかもしれませんが、小さな形で始まりつつも、時間をかけて、企業文化を形成するものに成長していくこともありえます。たとえば、マネタリーレベルで始められたコ・クリエーションの実践は、やがて使用/経験レベル、さらには社会的なレベルへと発展していくこともありえるのです。

Liz SandersMakeTools 代表

Aug 17, 2015 01:00 101デザインメソッドとビジネスモデルキャンバス

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は、101デザインメソッドに沿ったイノベーションプロジェクトを進行する中で、効率的に事業設計を行うためのツール「ビジネスモデルキャンバス」をどう活用できるかについて考えたいと思います。

まず、101デザインメソッドでは、イノベーションをもたらすためのプロジェクトを7つのモードに分けて捉え、プロジェクトの状況に応じてモードを使い分けながら、イノベーションに向けた検討を進めていきます。7つのモードとは以下を指します:

モード1:目的(機会)を見出す
モード2:コンテクストを知る
モード3:人々を知る
モード4:インサイトをまとめる
モード5:コンセプトを探求する
モード6:解決策を練る
モード7:製品・サービスを実現する

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一方、ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルを9つの要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係/収益の流れ/主なリソース/主な活動/パートナー/コスト)から構成されると見なし、各要素を検討しながら最良のビジネスモデルを組み立てていきます。

101デザインメソッドがイノベーションをもたらすためのプロセス・メソッドの視点で描かれているのに対し、ビジネスモデルキャンバスは最終的なアウトプット(=ビジネスモデル)の視点で描かれているとイメージいただければ、理解していただきやすいかと思われます。

さて、ビジネスモデルキャンバスがビジネスモデル全体の俯瞰を得意とすることから、少なくとも二つの活用が可能になります。それは、「A.既存のビジネスモデルのベンチマーク」と「B.新しいビジネスモデルの組み立て」の二つです。

「A.既存のビジネスモデルのベンチマーク」では、他業界のビジネスモデルのベンチマークを通して新しい機会領域を発見したり(モード1)、自社業界のビジネスモデルのベンチマークを通して各社が陥っているバイアスを見つけ出したり(モード2)することが可能です。それらのベンチマークとは、業界内各社の9つのビジネス要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係/収益の流れ/主なリソース/主な活動/パートナー/コスト)の傾向分析を指します。

「B.新しいビジネスモデルの組み立て」では、調査で得たインサイトをベースに4つの要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係)を検討することでコンセプトやソリューションのアイデアを得たり(モード5・6)、それを9つのビジネス要素にまで展開・統合して新しいビジネスモデルの示唆を得る(モード7)ことが可能です。

以上、ビジネスモデルキャンバスの特徴が理解できると、それをイノベーションプロジェクト上の適切なタイミングで活用することが可能になります。イノベーションプロジェクトの中で情報の森に迷ったら、ビジネスモデルキャンバスを用いて全体像を整理し直してもよいでしょう。そのように各手法の強みを活かしていくことができれば、イノベーションに向けた、より精度の高いプロセスが実現できるのだろうと思います。

Takeshi Sato株式会社mct ストラテジスト

【タグ】 101_design_methods,

Jul 21, 2015 04:00 Patient Journey Workshop

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こんにちは、mctの北村です。
7/15にインフロント様主催で「Patient Journey Workshopセミナー」を開催しました。

セミナー前半では、人間中心デザインの考え方やマインドセット、医療業界における先進的な取り組み事例をご紹介。

後半では、実際の患者さんの取材映像を通じて、患者さんが疾患に気づいてから今の生活に順応していくまでの行動、感情・モード、関連する人、行動を促進/阻害する要素を、マップ上に洗い出し、患者さんの経験を改善していくためのポイントについて議論いたしました。

こちらのワークショップ型セミナーは、お客様企業へ訪問しての開催も可能です。
ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

Wakako Kitamura株式会社mct サービスデザイナー

【タグ】 ヘルスケア,

Jul 10, 2015 05:00 顧客視点のオムニチャネル設計のために知っておきたい3つのこと

mctでは5月から月1回クライアントのみなさんとオムニチャネルクルースキャン体験ワークショップを実施しています。

 

 

■オムニチャネルクルースキャン体験ワークショップとは
顧客視点によるオムニチャネルマーケティングの考え方とポイント、オムニチャネルエクスペリエンスの属性とデザインアプローチをレクチャー形式で学んでいただき、後半は実際のフィールドワークを通じてクルースキャンを体験いただく、4時間半のワークショップです。

 

■実際のワークショップの様子

[Step 1] レクチャー
オムニチャネルマーケティングの現状とあるべき方向性は? 顧客視点で経験を評価する手法「クルースキャンTM」とは? レクチャー形式で学んでいただきます。

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[Step 2] フィールドワーク
実際のフィールドワークを通じて、オムニチャネルクルースキャンTMを体験していただきます。

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[Step 3] 課題発掘~改善アイデア開発
フィールドワークを振り返って、オムニチャネルに於ける課題を分析し、改善のためのアイデアを開発します。

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[Step 4] ラップアップ
ワークショップを振り返りながら、顧客視点のオムニチャネルマーケティングのポイントを改めてレクチャーします。

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■何を体験してほしいのか
インターネットやモバイルデバイスの普及によって、企業から顧客への様々なアプローチが可能になった今、様々な業界でオムニチャネルマーケティングによる顧客獲得のための取り組みが広がっています。
しかし、オムニチャネルマーケティングを顧客獲得だけで考えてしまうのは、長期的には効果的ではありません。
オムニチャネルマーケティングによって顧客ロイヤルティを高めることの大切さとそのためのポイントを体験していただくのがこのワークショップ。

参加者は、顧客の本当のゴールを理解した上で、以下の3つの視点に沿って、オムニチャネルの設計のポイントを理解していただきます。

1. やりとりを簡単にして顧客の心理的、認知的、時間的、身体的負担をなくす。
2. 一連のやりとりの中で顧客がなりたい感情を理解し、サポートする。
3. ブランドを介して顧客と従業員が繋がる文化・しくみを築く。

参加者は、この体験を踏まえて、顧客ロイヤルティを高めるという視点で自社のオムニチャネルエクスペリエンスを検討することができます。
また、ペルソナやクルースキャンTMといった手法を用いてオムニチャネルエクスペリエンスをデザイン、導入するプロジェクトをmctと立ち上げることも可能です。

 


■ご参加者の声

[メディア系]
●参加の目的は?:クルースキャンというツールの理解。
●参加してみて感じたこと:お客様とのタッチポイントでのコミュニケーションを設計していく上で、非常に参考となる内容でした。
●今後の業務への展開:一貫性、連続性など、考えなければいけないポイントが整理できました。

[インターネットサービス系]
●参加の目的は?:業務のなかであまりフィールドワークが発生しないので、具体的な体験をして今後の検討の材料にしたかった。
●参加してみて感じたこと:ペルソナ、シナリオ、ジャーニーマップ等は社内でもやっておりますが、フィールドワークやまとめ方の視点は参考になりました。
●今後の業務への展開:オブザベーションやウォークスルー後のファクター抽出に。

[通信系]
●参加の目的は?:紙のDM、コール、WEBと様々な顧客タッチポイントの整理に興味があったため。
●参加してみて感じたこと:卓越性、文脈性、連続性、一貫性のバランスの重要性が理解できた。
●今後の業務への展開:各チャネルの連携に活用したい。

次回のワークショップは7月23日(木)に弊社東京会場で開催です。
みなさまの課題解決のヒントのために、一度参加してみてはいかがでしょうか。

Haruhiko Kusanagi株式会社mct CCO/エクスペリエンスデザイナー

Jul 10, 2015 05:00 イノベーションを成功させるための4つのコア原則

Amazonの商業デザインカテゴリーでベストセラー1位となった『101デザインメソッド』。こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著した同著を紹介するコーナーです。今回はmctの佐藤より、イノベーションを成功に導く「4つのコア原則」をご紹介します。

 

1つ目の原則は、「ユーザーの経験に焦点を当てる」というもの。商品やサービスではなくユーザーの経験ベースにイノベーションを考えるという内容。「どのようなスポーツシューズを開発するか」という商品ベースの発想だけでは、ナイキプラスのサービスは生まれてこなかったはずです。

2つ目の原則は、「システムとしてイノベーションを捉える」というもの。システム(ステークホルダーやルール)の全体像を見据えてイノベーションを考えるという内容。書籍をオンラインで購入できるシステムだけでなく、倉庫・物流・パートナーシップ等のビジネスの全体像についても十分な考慮がなされていなければ、Amazonは大きく成長しなかったはずです。

3つ目の原則は、「イノベーションの文化を醸成する」というもの。社内の誰もがイノベーションを目指すマインドセットを持っていれば、常にアイデアは生まれ、大きなイノベーションにつながる確率は高まっていくはずです。

4つ目の原則は、「規律あるイノベーションプロセスを採用する」というもの。業務プロセスの中にイノベーションを呼ぶメソッドが適切に含まれていれば、イノベーションを起こす確度が高まっていくはずです。

 

ここで、ひとつ面白い現象をご紹介します。具体的なアイデアを出し始めると、従来の商品・サービス中心の発想に戻ってしまう方が多い、というものです。スポーツシューズそのものではなくスポーツシューズ利用者の行動全般を考えようとしても、いつの間にか、「どのようなスポーツシューズにするか」であったり、最近では「スマホを使って何かできないか」といったようなモノ中心の思考に戻ってしまう。どうやら人間という生き物は、自分が得意とする頭の使い方(≒商品やサービス中心の思考)に強い引力で引き寄せられてしまうようです。

 

では、その引力から解き放たれ、自由に発想を行えるようになるためにはどうすればよいか。その解のひとつに、上記の4つ目の原則(規律のあるプロセス)を活かすという考え方があります。

 

コンセプトを発想する時、リサーチを行う時、事業アイデアを考える時。イノベーションを目指すプロセスには様々な局面がありますが、それぞれの局面ごとにイノベーションに近づきやすいメソッドが存在します。それらのメソッドを業務プロセスに組み込み、それに(半ば強制的に)従って業務を遂行させる。そういったマネジメントも、イノベーションの確度を高めるためには必要だということです。

 

ひとたび成功体験が生まれると3つ目の原則(イノベーション文化)も培われ、結果、規律あるプロセスも自発的に遵守されていく・・・そんなイノベーションに向けた良いスパイラルが形作られていくでしょう。イノベーションの文化とプロセスが組織にしっかりと根付くと、組織としてのイノベーション力も圧倒的に高まっていくはずです。

 

そのような状態を目指し、貴社においてもまず、業務プロセスを見直されてみてはいかがでしょうか。

 

・・・

今後、このコーナーでは『101デザインメソッド』から有用なメソッドをピックアップし、私たちの解釈も加えた上でご紹介していきたいと思います。気長にお付き合いいただけますと幸いです。

 

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Takeshi Sato株式会社mct ストラテジスト

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