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11 26, 2019 03:00 mct blog|Narrative & Bias 書籍『他者と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論』を読んで

Narrative & Bias

先月発売され話題の書籍、『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇多川元一著、 NewsPicksパブリッシング)を読みました。すでにいろいろな方が書評やレビューをあげておられますが、mctの組織デザインユニットに所属する身として、また企業の製品・サービス開発のプロジェクトをお手伝いすることが多い身として、受け取る示唆が非常に多い書籍だったので、ここでご紹介させていただきます。

本書の冒頭で、著者は既存の知識・方法で解決できる問題「技術的問題」と、既存の方法で一方的に解決できない複雑で困難な問題「適応課題」という2つの問題が紹介され、組織において起こる問題は後者の「適応課題」であることが多いと述べます。他部署に協力を求めても理解が得られない…などのように、これといった解決策が見つからない問題です。そして、こうした向き合うことが難しい問題を解くための方法として、「対話」というものが紹介されます。「適応課題」は一方的に解決することができない問題であり、組織の「関係性」の中で生じる問題だからです。

 

適応課題に向き合うために、組織内の自分と他者との関係性を見つめ直し、改めるために重要なのが、著者が述べるもう一つの概念、「ナラティブ」です。ここで言う「ナラティブ」とは、解釈の枠組み、ビジネスの世界では「専門性」「職業倫理」「組織文化」などによって生まれる枠組みのことです。「上司たるもの、こういう存在であるべき」「部下ならば、こんな時はこういうふうに振る舞うものだ」といったように、自分たちの行動を、しばしば無意識に規定している枠組みと言ってもいいかもしれません。

私はこの「ナラティブ」という概念を、mctがよく用いる「バイアス」や「フレーム(リフレーム)」という概念と非常に関係が深いものとして読みました。「●●とは、こういうものだ」という思い込みや暗黙の前提を元に話をするため、他者とのわかりあえなさを生み出す…という状況は、「企業視点で考えるあまり、ユーザーに受け入れられる製品やサービスを生み出せない」という、多くの企業が陥っている状況と重なるものがあります。そういう意味でこの本は、単に組織論としてだけでなく、マーケティング論やコミュニケーション論としても読むことができます。


本書の以降では「対話」のプロセスとして、以下の4つのフェーズが紹介され、実践の方法が語られます。

1. 準備:自分のナラティブを脇に置き、相手と自分のナラティヴに溝(適応課題)があることに気づく
2. 観察:相手の言動や状況を見聞きし、相手のナラティヴを探る
3. 解釈:溝を飛び越えて、橋がかけられそうな場所や架け方を探る
4. 介入:実際に行動し、橋(新しい関係性)を築く


具体的な進め方は是非本を読んでいただきたいですが、mctが提供するデザインリサーチも、上のプロセスとよく似たコンセプトで進められます。自分(企業)のバイアスを可視化して問題をリフレームし、相手(ユーザー)を観察して相手の課題やゴールを探り、解決策を考えて実行するー。ユーザー理解とは、ユーザーのナラティブを探ることなのかもしれないな、と思いました。

本書をお読みになり、どう向き合えばいいかわからない問題を解きたい、解く鍵を見つけたいという気持ちがモヤモヤと芽生えた方は、一度mctのメニューをご覧ください。組織開発、組織に限らず様々な課題解決のお手伝いをいたします。相手のナラティブ理解を通じて自分のバイアスをリフレームする、そんな刺激的な体験をご一緒できると幸いです。





他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)
宇田川 元一
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