こんにちは。mctの合田です。
タイトルにある「ひとりでいられる能力」について、ご存知でしょうか。
大学時代、ドナルド・ウィニコット(イギリスの小児科医、精神科医、精神分析家)が提唱した「ひとりでいられる能力(the capacity to be alone)」を知り、『ひとりでいられる人』と『ひとりでいられない人』の違いはなんなんだろうなぁ。という単純な興味からそれを卒論にしました。
有名な話ですが、幼少期の母子関係で「母親=安全基地」だと子供が感じることができれば、「自分には安全基地があるので外に出かけても大丈夫」と冒険することができます。つまり、良好な親子関係であれば、子供は不安なく外に出られる(何かあっても帰ってこられる場所がある)、と言われています。
ウィニコットによれば幼少期の母子関係が良好であれば、幼少期以降も「ひとりでいられる能力」が培われていきます。
当然、ひとりぼっちという状況も「ひとりでいられる能力」に関係しますが、ここで面白いのは友人と一緒にいても「ひとりでいる」ことができるということです。
(以下はウィキペディアの引用です)
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ひとりでいられる能力は洗練された現象である。いろいろな体験がひとりでいられる能力の確立に寄与するが、その最も基本的なものは、「幼児または小さな子どものとき、母親と一緒にいてひとりであった」という体験である。つまりひとりでいる能力は逆説であり、誰か他の人が一緒にいるときにもった、「ひとりでいる(to be alone)」という体験である。
母親を自己に内在化することで、やがて幼児はしばらくはひとりでいることができるようになるし、そしてまた、安心してひとりでいることを楽しむことができるようにもなっていく。幼児はこのひとりでいる能力をもった状態になってはじめて、外界からの侵害に反応することなく、やけに活動的な人間にならずともいられるようになる。やがて幼児は実際に母親が付き添うことを諦めることができるようにもなる。それは内的環境の確立が達成されたからである。ひとりでいられる能力は情緒的成熟とほとんど同意語である。
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上記のポイントは、「自分は自分」だとアイデンティティの確立ができていれば、周りの環境に左右されない、ということです。
余談ですが、「十分に良い母親 good enough mother」について書かれた精神科医の先生の記事も興味深いです。
https://www.huffingtonpost.jp/arinobu-hori/the-capacity-to-be-alone_b_17047378.html
このウィニコットの「ひとりでいられる能力」は1958年に提唱されました。
60年後の現在はネット環境など様々な状況が変化しつつあります。ひとりでいても大勢でいてもSNSで情報をシェアしあい、ウィニコットの定義からすると、ひとりといえばひとりですし、複数といえば複数(ひとりではない)といった状況になっています。
ここで、テクノロジーに関する書籍を参照してみます。
2016年に出版されたケヴィン・ケリーの「〈インターネット〉の次に来るもの」には、未来を決める12の法則が記載されています。
最新のテクノロジーに作用する傾向を集めて、それらを12の動詞(BECOMING、COGNIFYING、FLOWING、SCREENING、ACCESSING、SHARING、FILTERING、REMIXING、INTERACTING、TRACKING、QUESTIONING、BEGINNING)で表現し、近い将来に起こる変化を述べています。
当然、SHARINGも含まれており、テクノロジーの視点からもシェアすることはより当たり前になってきます。
★シェアの習慣がますます一般的になり、我々の文化の基盤になってきている。こうしてシェアしながら大陸をまたがるグループの会ったこともない人々と、社会階層など関係なく一緒に百科事典やニュース配信、動画アーカイブ、ソフトウェアなどを協働して作り上げている。(上記書籍のP193より引用)
ちなみに、この書籍でのSHARINGは自分の知識をシェアすることで、それに対して他人が別の情報をシェアしてくれるという、「知識のアップデート」を示唆しているので、ポジティブな意味になります。
私の個人的な意見ですが、「ひとりでいられる能力」は幼少期の体験が影響している人間の根本的な部分なので、SNSが普及している現在でも必要な能力だと感じています。
(ひとりでいられる能力が欠如した場合、依存や分離不安などの要因の1つになるのかもしれません)
最近では「就寝1時間前からスマホは機内モードにしている」という話もちょくちょく聞きます。
無理やり遮断することでひとりになる時間を作っている人もいますが、今後はもう少しスムーズにひとりになれる時間を作れるようなサービスが出てくるかもしれません。
今回は、心理学の用語と現在のトレンドについて書籍を参考にしながらブログを考えてみましたが、
また面白そうなものがあればご紹介させていただこうと思います。

- Satomi Goda株式会社mct
エスノグラファー
■ミニバンカスタマイズリサーチ~コンセプト開発
ホンダアクセス様(純正用品の開発、生産、販売メーカー)


先方PJメンバーの方がフィールドワークを実施され、ミニバンカスタマイズの新価値仮説を開発。先方担当者を交え、その仮説をユーザーに提示し、検証や潜在ニーズを探っていく、コ・クリエーションユーザーリサーチを実施。これまでになかったミニバンのインサイトと潜在ニーズを獲得し、それらの情報から新しいミニバンの方向性、コンセプトを開発した。
■取組内容
・コ・クリエーションユーザーリサーチ
・分析共有セッション
・コンセプト開発セッション
■取組のプロセス

■活用
後に先方にてオデッセイを利用したプロトタイプモデルが製作され、東京オートサロン2018に出展。

オデッセイ・クロスクルーザー
※この記事は、ホンダアクセス様の許可を得て掲載しております。

- Shuichi Jouriku株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/エスノグラファー

こんにちは。組織デザインユニットの渡邉です。近年「デザイン思考」の重要性が高まっており、以前mctブログでも「なぜ組織にデザイン思考が必要なのか」という記事をご紹介しました。今日は、デザイン思考の社内導入事例として、サントリー食品インターナショナル様のデザイン思考ワークショップをmctがサポートした様子をご紹介します!
サントリー食品インターナショナル様では、R&Dメンバー一人ひとりが、普段の商品開発プロセスにデザイン思考の考え方を活用していけるようになるための「サントリー流 デザイン思考ガイドブック」を作成されています。今年3月に開催されたグローバルミーティングでは、そのデザイン思考ガイドブックのお披露目と、メンバー間での理解・共有を深めることを目的としてデザイン思考ワークショップが実施されました。参加者は世界各国、各地域の支社から招集され、研修後は、全社的にデザイン思考の活用にドライブをかかることが最終的なゴールでした。
ワークショップの構成は2部にわかれており、mctではワークショップの計画と実施をサポートさせていただきました。
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■マインドセット
第1部のマインドセットパートでは同志社女子大学 現代子ども学科 教授の上田信行先生をお招きしました。上田先生はMITメディアラボの客員教授のご経験があり、人が楽しく学び、働くための場の環境デザインを研究されています。さらに上田先生のゼミの学生さん13名もお呼びしました。(上田ゼミではゼミ生のことを「girlsBand」と呼び、音楽バンド…ではなくワークショップの企画運営と中心とした活動を行っています。)
今回のワークショップでは1日のスタートとして、上田先生とgirlsBandのみなさんとデザイン思考のためのマインドセットを経験から学ぶパートを設計・実施しました。マインドセットのセットアップは、デザイン思考を推進する上での「エンジン」とも言える最も重要なポイントの一つです。
ワークショップはgirlsBandのダンスからスタート!
一気に場の雰囲気を変え、全員でダンスを踊るワークに入ります。最初はわけもわからず手拍子をしていただけの参加者がどんどんと引き込まれ、自分たちも身体を動かしてダンスを踊れるようになります。10分程度のレクチャーでほとんどの参加者が見事に振り付けを覚えていました!

もう一つ行ったワークがレゴの高積みです。音楽がなる中でグループごとにレゴをできるだけ高く積み上げていきます。積み方は各グループの自由。チームごとに試行錯誤しながらどんどんタワーを高くしていきます。途中に作戦を練る時間もあり、タワーの積み方や役割分担などチームカラーがよくでていました。頭上をはるかに超える高さのレゴ−タワーが完成したときには、自然と歓声があがるほど全員が夢中になって取り組んでいました。
デザイン思考を推進していく手法は様々なものがありますが、マインドセット(心の持ち方)をととのえ、組織メンバーが同じ姿勢や態度で取り組むことでスピードは何倍も加速していきます。チーム一丸となって問題に取り組み、失敗を恐れずにチャレンジしていける環境を提供すること。そしてそこでの経験を思い切り楽しんでもらうことがマインドセットの獲得では大切です。
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■プロセス
第2部は、サントリー食品インターナショナル様独自で開発されたガイドブックをもとにデザイン思考のプロセスを学ぶパートです。今回は「女子大生がワクワクする新しい商品・サービスを開発する」をテーマにワークショップを行いました。
次世代の消費の中心となってくミレニアル世代の女子大生ですが、彼女たちの実態はよく知ろうと思わなければわからないことだらけです。ワークショップではデザイン思考のプロセスに合わせ、理解からアイデアの具体化までを段階的に実施しました。それそれのフェーズごとにレクチャーを交えつつ実践と理論を繰り返し、デザイン思考を習得していきます。
理解のフェーズでは密着ビデオやデプスインタビュービデオ、食日記などを中心に情報のインプットを行いました。参加メンバーは彼女たちの言動に驚きの連続だったようです。こうした発見が次のアイデアのインスピレーションになっていきます。また、自分たちの五感を使って、彼女たちが普段飲んでいる飲み物を実際に味わってみたり、直接対話を重ねたりしていくことで、彼女たちへの考え方や価値観に対する理解が深まっていく様子が印象的でした。

さらにデータを解釈するフェーズではインプットした情報をもとにユーザーのインサイトを定義します。商品の具体的なアイディアをだすフェーズでは抽出したインサイトから具体的な商品・サービスアイディアをみんなで考えていきました。
デザイン思考のアプローチはユーザー中心の設計が重要となります。ワークショップでは女子大生の意見を常に取り入れ、アイディアをどんどん修正していく場面がいくつもみられました。プロトタイプをつくっては壊し、またつくっては壊す作業を繰り返し、最終的に6つのアイディアが完成しました。
完成したアイディアに対して女子大生からフィードバックをもらい、さらにそれを改良したところでワークショップは終了しました。
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デザイン思考を組織に導入するためには手法だけを導入するのではなく、それに取り組む人たちが広い視野を持ち、ポジティブなマインドセットである必要があります。とはいえ、マインドだけセットされていても、具体的な手段がなければ実務を遂行していくことはできません。デザイン思考推進のために、今回ご紹介したワークショップのような「マインドセット」と「プロセス」の両軸からのアプローチの必要性がより高まっていきそうです。
※この記事はサントリー食品インターナショナル様の許可を得て掲載しています。

- Saki Watanabe株式会社mct エクスペリエンスデザイナー
2018年3月23日(金)、株式会社大伸社コミュニケーションデザインと株式会社mctによるセミナーを実施しました。IoTビジネスをテーマとし、「IoTを使った新規事業」「顧客経験×IoTビジネス」といった領域に課題・関心をお持ちの皆様にお集まりいただきました。

そこで今回はセミナーでお伝えした、IoT商品の開発にあたって重要なポイントを一部だけご紹介します。それは、IoT商品を開発するときに必要な視点は二つあり、一つは顧客とIoTプロダクトとの間に発生する新たな経験をいかに良いものにするかといったマイクロな視点、もう一つは、IoTプロダクトから得られたデータの先にどのようなネットワークを作れば新たな価値を生むのかといったマクロな視点で、この二つの視点を行き来することが大切だということです。

例えばお掃除ロボットを思い出していただくと、いまどきのお掃除ロボットは間取りを学習しお掃除をより効率的にしたり、何かトラブルがあればアプリに通知したり、必要になれば自分で充電ベースに戻ったりと非常に便利になりました。
ただし、お掃除ロボットを使うためには、お掃除の邪魔になるものをあらかじめよけておいたり、段差をなくしておいたり、充電ベースを置く場所を確保したりと今まで慣れ親しんだやりかたではなく新しいインタラクションに人間側が合わせないとならないという側面があります。つまり顧客経験をよく考え、ユーザーに負担の少ない設計をしないと、そもそも商品を導入していただくための土俵にも上がれません。
一方、顧客経験を良くしてただ使ってもらうだけではユーザーにとっての価値は限定的になります。デバイスから得られたデータやネットワークを起点にユーザーへのフィードバックの価値を大きくしなければ、ユーザーも企業もIoTの恩恵を十分こうむることができません。例えば、家庭用サーモスタットのNestは、洗濯機や火災報知器、スプリンクラーなど様々なデバイスとのネットワークを前提として開発されていて、ユーザーの生活全体をより快適なものにしています。
セミナーでは、これらのマイクロな視点とマクロな視点を使いこなしていただくためにワークショップ形式でIoT商品のアイデアを開発しました。具体的には、ペルソナを元にカスタマージャーニーに沿ってゴール分析をしたり、ネットワーク視点に立ってステークホルダーにとっての価値をどう高めるか?ということを発想し、身近な日用品に思ってもみない角度からの価値を検討でき、大変盛り上がりました。
mctのCXデザインチームでは、今後もIoTをテーマとしたセミナーを実施予定です。どうぞご期待ください。

- Saori Kameda株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー