“I always thought Lou was a coyote.”
主人公のLouを「コヨーテ」に見立てていたというのです。
これはいわゆる「メタファー」を活用したアプローチと言えます。
名著『レトリックと人生』の言葉を拝借すると、メタファーの本質は、「ある事柄を他の事柄を通して理解し、経験する」ことですが、このケースでは、「Lou」という未知のキャラクターを、「コヨーテ」という既知のモチーフを通して強烈に訴えかけることに成功しています。
下記はコヨーテの特徴を列挙したものですが、驚くほどLouの性質に酷似していました。
・痩せこけており、常に腹をすかせている(そもそも太ったコヨーテは存在しない)
・夜になると、餌を求めて山から下りてくる
・地球上で最も適応力のある動物と言われるほど、高い生命力を誇る
・古来の神話の中で「トリックスター(ペテン師)」として描かれている
種明かしをされると「なんだ」という感じですが、この話のポイントは、「一見しただけでは、コヨーテをメタファーにしているとは気がつかない」点にあると思います。映画の中で、Louのバックグラウンドは全くと言っていいほど語られません。直接的な説明に頼らず、表情・動き・セリフの言い回しなどを、「コヨーテ」というメタファーを軸に構築することで、さりげなく、しかし圧倒的な存在感を生み出しているのです。
こうした「メタファー」をコンセプトに応用する発想は、ビジネスにおいても有用です。適切なメタファーさえ見つけられれば、冒頭私が挙げた「非情/貪欲/高い学習能力と適応力/周囲を出し抜く才能」といったくどくどしい説明をショートカットして「要はこうである」という本質に一気に迫ることができるからです。
ほんの15秒しかないTVCMや、店頭での一瞬で「新商品」を伝えなくてはいけない局面において、「本質に一気に迫れる」ことは、それだけで大きなアドバンテージとなるでしょう。
しかもメタファーは、上述したように、しばしば「一見しただけでは気がつかない」ものです。これは「競合に模倣されにくい」と言い換えることができ、その点でも優れていると思います。
さらに付け加えると、メタファーは人の無意識に働きかけるため、共感を呼びやすくなります。件の作品の監督/脚本を務めたダン・ギルロイは、あるインタビューの中で「“自分とかけ離れたサイコパス”の一言で観客が片づけられないような人間味をLouに出したかった。“観る人が彼に共感できるように”と常に考えていた」といった旨の発言をしていましたが、まさに目論見通りだと感じました。
実際、「なんだかうまく説明できないが、理屈を超えて共感できる」商品は、「メタファー」を上手に取り入れていることも多いです。(有名な例では、KIRIN『FIRE』の『Zippoライター』や、IBM『ThinkPad』の『松花堂弁当』など)
新しい商品やサービスを世の中に展開する時、過剰に「説明」をしてしまってはいませんか? もしそう感じる節があるようならば、「メタファー」を使ったアプローチは有用な手段です。
ちなみに、「メタファー」には表層的なものに加え、より本質的な『ディープメタファー』なるものが26個ほど存在するのですが、こちらの紹介はまた別の機会に譲ろうと思います。
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