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Nov 30, 2017 06:00 (第6回)デザイン思考を用いたビジネスデザイン [ソリューション探索編]

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mctビジネスデザインユニットの杦木(すぎき)です。
 
「アイデア出しをしたがその受容性がわからないので検証したい」といったご相談をいただくことがあります。
 
機会探索のフェーズを終えて「こんな顧客が抱いているこんな困り事・ニーズに対して、自社としてはこんなことができそう」というビジネス機会が見えてきても、プロダクトやサービスを具体的に作り込んでいく中で、どの方向に進んでいいか迷いが生じてしまい、進路を見失った感覚に陥る開発担当者は少なくないと思います。
 
 
大きな方向転換は早めに済ませる
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受容性を評価していく中でターゲット顧客が「このまま状態のサービスをぜひ利用したい!」となるケースは稀なので、アイデアの良し悪しを評価することよりも、一連のプロセスを通して方向性を修正し、よいソリューションを探索していくことの方が重要になります(特に検討初期段階)。
 
これは「リーンスタートアップ」の中でも語られることですが、考え出したビジネスアイデアにおけるリスク(方向性の修正が必要になり得る要素)を洗い出した上で、大きなリスクから検証し、大きな方向転換は早めに済ませる方が限られたリソースを有効に使えます。
 
 
ニーズがあると思って始めたビジネスの多くが、ニーズがなくて失敗している。
最も大きなリスク=「顧客と課題の間のフィット感があるか?」をまず検証する 
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一般的に、最も大きなリスクは「顧客と課題の間にフィット感がない」ことと言われます。これまでのフェーズで検証できていない場合は「着目している課題は、本当に顧客にとって解決したいと思う課題か?」という点の確認に重きを置きます。また、サービスを成り立たせるために欠かせないステークホルダーがいる場合は、その人たちの課題に対してフィット感があるかも重要です。
 
顧客と課題の間のフィット感を確認できたら、課題とソリューションの間にフィット感があるか確認します。これには顧客の視点で見た時に、自社が提案するソリューションが顧客の課題解決になっているかという観点と、そのソリューションが実現可能かという観点で、検証を進めていきます。実現可能性については早い段階から詳細に詰めていく必要はないかもしれませんが、そもそも顧客に提供できる価値が変わる可能性があるようなサービスの核になる部分の実現可能性は早めに検証することをお勧めします。
 
 
行動変容のドライバーを捉える
 
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デザイン思考的なプロセスで機会探索を行っているのであれば「実は顧客はそんなことをまったく必要としていなかった」ということはめったにないと思います。ただそれでも「顧客は確かに課題は抱えているけど、アクションを起こして解決したいほどではない」「課題を解決したい気持ちより、それを躊躇うハードルの方が大きい」(課題フィットにおける問題)、あるいは「確かに解決したいけど、このサービスはなんか使う気になれない」(ソリューションフィットの問題)ということはしばしば起こります。
 
あるソリューション案を提示したときに、顧客は過去の経験などから形成されたメンタルモデルやそのときの環境からソリューション案への期待値は生まれ、それがほしいかどうかの評価につながります。この態度形成の要因(ハードルやドライバー)をつかみ、ソリューション案がどのように位置づけられているかを理解しておけば、市場での顧客の反応を予測するのに役立ちます。そして、このドライバーをソリューションに反映していくことが重要です。 
 
mctはもともとインサイトリサーチを得意としてきました。このノウハウを活かして、ソリューション探索プログラムでは、顧客やステークホルダーに行動変容を促すようなソリューション開発をサポートします。ビジネス機会を見つけた後のステップでお困りの場合、ご相談いただければ、それぞれの状況に合わせた進め方を提案させていただきます。
 
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新規事業・新規技術のビジネス開発プログラム 
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Yoichi Sugiki株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Jun 29, 2017 01:59 100の説明より、1つのメタファー

こんにちは、mctの増田です。

みなさんは『ナイトクローラー』という映画をご存知でしょうか?

刺激的なスクープ映像をTV局に高値で売りさばく「映像パパラッチ」が暗躍する作品で、常軌を逸した主人公Lou(ルー)の狂気は、一度観るとトラウマものです。

Louは過去に類を見ないキャラクターで性質を言い表すのが難しいのですが、連想するキーワードを挙げるならば、「非情/貪欲/高い学習能力と適応力/周囲を出し抜く才能」といった感じでしょうか。手段を選ばず事故や犯罪の決定的瞬間を狙う姿が、とにかく淡々と描かれます。

主演のジェイク・ギレンホールは、本作のために実に12キロも減量したと言います。頬はこけ、眼窩は落ちくぼみ、見た目からしてかなり不気味なのですが、自分が感じた戦慄は、そういった外見以上に、むしろ「内面からにじみ出る何か」のせいに思えてなりませんでした。

鑑賞後、その「何か」の正体を求め、彼がどんな役作りをしたのか調べてみたところ、興味深いコメントを見つけました。 

“I always thought Lou was a coyote.”

主人公のLouを「コヨーテ」に見立てていたというのです。

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これはいわゆる「メタファー」を活用したアプローチと言えます。

名著『レトリックと人生』の言葉を拝借すると、メタファーの本質は、「ある事柄を他の事柄を通して理解し、経験する」ことですが、このケースでは、「Lou」という未知のキャラクターを、「コヨーテ」という既知のモチーフを通して強烈に訴えかけることに成功しています。

下記はコヨーテの特徴を列挙したものですが、驚くほどLouの性質に酷似していました。

・痩せこけており、常に腹をすかせている(そもそも太ったコヨーテは存在しない)

・夜になると、餌を求めて山から下りてくる

・地球上で最も適応力のある動物と言われるほど、高い生命力を誇る

・古来の神話の中で「トリックスター(ペテン師)」として描かれている

種明かしをされると「なんだ」という感じですが、この話のポイントは、「一見しただけでは、コヨーテをメタファーにしているとは気がつかない」点にあると思います。映画の中で、Louのバックグラウンドは全くと言っていいほど語られません。直接的な説明に頼らず、表情・動き・セリフの言い回しなどを、「コヨーテ」というメタファーを軸に構築することで、さりげなく、しかし圧倒的な存在感を生み出しているのです。

こうした「メタファー」をコンセプトに応用する発想は、ビジネスにおいても有用です。適切なメタファーさえ見つけられれば、冒頭私が挙げた「非情/貪欲/高い学習能力と適応力/周囲を出し抜く才能」といったくどくどしい説明をショートカットして「要はこうである」という本質に一気に迫ることができるからです。

ほんの15秒しかないTVCMや、店頭での一瞬で「新商品」を伝えなくてはいけない局面において、「本質に一気に迫れる」ことは、それだけで大きなアドバンテージとなるでしょう。

しかもメタファーは、上述したように、しばしば「一見しただけでは気がつかない」ものです。これは「競合に模倣されにくい」と言い換えることができ、その点でも優れていると思います。

さらに付け加えると、メタファーは人の無意識に働きかけるため、共感を呼びやすくなります。件の作品の監督/脚本を務めたダン・ギルロイは、あるインタビューの中で「“自分とかけ離れたサイコパス”の一言で観客が片づけられないような人間味をLouに出したかった。“観る人が彼に共感できるように”と常に考えていた」といった旨の発言をしていましたが、まさに目論見通りだと感じました。

実際、「なんだかうまく説明できないが、理屈を超えて共感できる」商品は、「メタファー」を上手に取り入れていることも多いです。(有名な例では、KIRINFIRE』の『Zippoライター』や、IBMThinkPad』の『松花堂弁当』など)

新しい商品やサービスを世の中に展開する時、過剰に「説明」をしてしまってはいませんか? もしそう感じる節があるようならば、「メタファー」を使ったアプローチは有用な手段です。

ちなみに、「メタファー」には表層的なものに加え、より本質的な『ディープメタファー』なるものが26個ほど存在するのですが、こちらの紹介はまた別の機会に譲ろうと思います。

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mctでは、ユーザーの無意識から「メタファー」を表出させる世界的メソッドZMET(Zaltman Metaphor Elicitation Technique)のライセンスを、日本企業で唯一保有しています。

ZMETメニューに関心がある方は、ぜひお問い合わせください。

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Nobuo Masuda株式会社mct エスノグラファー/エクスペリエンスデザイナー

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