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Jan 29, 2018 02:46 なぜ組織にデザイン思考が必要なのか?  − 2 −

前回に引き続き、デザイン思考を先駆けて取り入れた企業の事例を紹介します。
これらの企業の共通点としては、下記の3つのポイントを踏襲していることが挙げられます。

  1)  単発のイノベーションを超えて、組織がイノベーティブであり続けることを目指す
  2)組織構造、プロセス、カルチャー、評価基準などの変革を取り組みに含める
  3)従業員のモチベーションを重視し、時間をかけてカルチャーを醸成する

各企業が実行している様々な施策のうち、部分的な紹介になりますが、具体的な工夫を見て行きましょう。


SAP
社外の安全なところで種を撒き、育てる

SAPは、ドイツに本社を置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社。1990年代後期から2000年初期、SAPは主力商品であるERP(統合基幹業務システム)ソフトの成功の後、次の新ビジネス開発に向け模索していたが、そう簡単には進まなかった。その原因を、SAP創業者の1人であるハッソ・プラットナー氏は、2016年の日経ビジネスのインタビューでこのように答えている。

「原因ははっきりしていた。既存のソフトと収益を食い合うのではないか、という懸念が社内から起きたんだ。(中略) 社内では既存の事業を脅かすような大胆な製品はつくれない。それで、どうしたか。私は社内の影響が何もおよばない、自由な環境で研究に取り組むことにしたんだ」 
日経ビジネスオンライン SAP創業者「イノベーションのジレンマ」を語る  https://www.sapjp.com/blog/archives/7038:より引用)

そして、自ら設立した社外の組織(情報技術研究のための大学・大学院)で、会社の考え方に凝り固まっていない学生たちとデザイン思考アプローチを用いて研究を重ね、次世代ERPの根幹をなす技術のアイデアを生み出したという。

hasso_plattner_Institute_hp.png
ハッソ・プラットナー氏が設立し、次世代ERPのための技術研究を行なったHasso Plattner InstituteのHP
(出典:https://hpi.de/en/channel-teaser/studium/design-thinking-for-students-of-all-disciplines.html

▶︎デザイン思考に限らず、新しい考え方・アプローチを社内組織に導入する際には摩擦や抵抗がつきものです。新しい動きを潰しにかかってくる抵抗勢力から隔離し、成功実績を作ってから本格導入するという考え方はよく聞くものの、できるだけ気づかれないよう徹底して伏せておいたのが功を奏したようです。

 

Whirlpool
導入段階ではインプットの目標/評価基準を重視する
Whirlpoolは、米国屈指の白物家電メーカー。従業員は約6万7千人、売上高は約1.5兆円にのぼる。
これほどの巨大組織でイノベーションを起こした成功例として、
今では様々な企業からベンチマークの対象として見られているが、1999年頃、Whirlpoolは決してイノベーティブな企業ではなかった。凡庸な「メーカー」から、「秀逸な貿易販売組織」そして「カスタマードリブンのブランド企業」に変革を遂げるべく、組織改革が行われた。まずWhirlpoolは、「ブランドに対するカスタマーロイヤルティを作り出すこと」を目指した。それが最終的には継続的な利益成長につながると考えたのだ。それを元に慎重に企業戦略のブループリントを作成したが、それがどんなに良くできた内容であれ、企業に根付くには、長期的な導入プロセスが必要であると考えた。その際に考案されたのが下記の「The Embedded innovation S-Curve」というプロセスだ。

Unleashing Innovation.png

(出典:『Unleashing Innovation: How Whirlpool Transformed an Industry』Nancy Tennant Snyder  (著),‎ Deborah L. Duarte (著))

イノベーションの初期段階では「アウトプットよりもインプット重視」とし、少数精鋭のメンバーに自社に合ったフレームワーク・ツールを開発させ、それを他のメンバーに学ばせるという期間に当てた。Whirlpoolがかけた時間は、2001年から2005年の約5年間。ここでは成果測定の基準も、何人にトレーニングしたか、どれだけの発見があったか、といったインプットにフォーカスした項目で設計されている。そしてやがてブレークスルーポイントに達し、いくつかの成功実績が挙がってきた段階で、アウトプット(利益などの目に見える結果)の測定を始めた。継続的な改善というフェーズにたどり着くまで、おおよそ10年間がかかったという。


▶︎Whirlpoolが成功したポイントは、長期的な視点で組織変革のプロセスを設計しただけでなく、このS-Curveのプロセスに合わせて評価の基準まで設計したところにあります。企業として目指すべきビジョンと、時間に沿った段階的な目標・基準が合わさって初めて組織への浸透が図れることが理解できる事例です。

 

Hyatt
従業員エンゲージメントをベースにカルチャーを育てる

ハイアット ホテルズ アンド リゾーツは、米国に本拠地を置き、約50か国で548以上のホテルを展開する世界有数のホテルブランド。 2011年、同社は過去最高の売上高、株価の急騰、従業員評価を得ていた。だがハイアットのリーダー達は、顧客の期待がより高度に変化しており、ブランドロイヤリティが徐々に低下しているという調査結果に危機感を覚え、スタンフォード大学のd.schoolでデザイン思考を学び、組織改革に乗り出した。

彼らは、「なぜ、私たちは変わる必要があるのか?」と自分たち自身に問いかけることから始めた。そして従業員の声を聞き、彼らにとって重要なことは何か、ゲストとの間にどんなことが起こっていたのか、またゲストはなぜ旅をするのか、実際にはどんな体験をしているのかについて深く理解した。そこで自分たちの提供している体験があまりに画一的すぎ、顧客に対してポジティブな印象を残せていないといった問題点を発見した。

その後、9つのホテルを「Innovation Lab」にして、経営幹部や実際のゲストを招いて改善案を体験してもらい、実験を繰り返すことで解決策を見出していった。その後も、世界中のエリアマネージャーが新しいアイデアを実験できるように支援。そこから、「早く失敗し、そこからの学びをシェアする」、ラピットプロトタイピングの文化が培われていった。

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従業員がイノベーションラボに集結し、顧客体験を改善するためのアイデアを考えている様子
(出典:Hyatt transforms nine hotels into innovation labs
https://ariegoldshlager.wordpress.com/2013/07/22/hyatt-transforms-nine-hotels-into-inovation-labs/ 

Chief HR officerのRobb Webb氏は、ハイアットが目指すブランドは90000人の従業員の力によってもたらされるとして、以下の5点を挙げている。

5_point.jpg(Building a Strong Workforce in Culturally Conscience Hotels Worldwide https://profilemagazine.com/2012/hyatt-hotels/ より引用)

▶︎今回は書ききれなかったのですが、ハイアットの事例で興味深いのは、チェックイン時のちょっとした改善と、デジタルテクノロジーやソーシャルメディアを取り込んだ破壊的なイノベーションを分けるのではなく、従業員が積極的に関わりながら、一体的にマネジメントしているところです。デザイン思考がカルチャーとして浸透し、継続的な変革・成長に繋がっている好例と言えます。

いかがでしたでしょうか。私も今回事例について調べていく上で、絶対的にこれが正しいというプロセスは存在しないものの、各企業のビジョンや個性にフィットさせた(慎重にカスタマイズした)導入の仕方を、根気よく模索していくことが結局近道なのかと学びました。そのようなプロセスや方法論を知る一方で、個人的には、人は心の底から「それはいい、やってみたい!」と共感できたものにしか真剣に取り組めないのかなとも思います。私たちがデザイン思考を知った時の驚きやワクワクを、一人でも多くの方に知っていただけるようなお手伝いができればと考えています。

Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Jan 23, 2018 02:21 なぜ組織にデザイン思考が必要なのか?−1 −

こんにちは。組織デザインユニットのクワンです。
昨年は、いたるところで”デザイン思考”という言葉を耳にしました。
日本のビジネス界でも一種のバズワードとなり、半ば呪文のように唱えられています。しかし、実際のところその重要性がいまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。

ここで一度、なぜデザイン思考の重要性が急激に高まったのか、また、組織に導入する必要性はあるのかについて検討していこうと思います。

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<差し迫った危機感から派生している>
組織が生き残るためには、ハーバードビジネススクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏が提唱した「イノベーションのジレンマ」を乗り越える必要があります。
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知識や技術のコモディティ化、グローバルによる競争の激化など、どんなに今まで成功していた大きな組織でも既存の事業をしていれば生き残れる時代ではなく、組織のトップは強烈な危機感を抱いています。
また、大企業だけに限らなくても、今の現業だけだと業界全体が他の業界に飲み込まれる、衰退していくという危機感を持っている経営者は多いのではないでしょうか。
デザイン思考の導入は、そういった危機迫った状況から
組織新しい価値を生み出す能力を高め、より創造的で機敏な組織を編成する方法
として導入されているのです。

<なぜデザイン思考だったのか>
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大きな社会的な背景として下記の3つのポイントが挙げられます。
 ・業界の垣根がなくなっている
     便利な生活になれた消費者に選ばれ続けるためには、製品だけではなく、それを利用するシーンも含めて提供しなければならない。
   それはサービス業に限ったことではなく、BtoBの企業や物作りを中心に行ってきた企業にも及んでいる。
   また、デジタル化が進み、顧客の情報が手に入るようになったため、相次ぐ他業界からの参入や
   複数の業界をまたにかけた一連のサービスを提供する会社
の台頭により、既存の業界の区分が意味をなさなくなっている。

 ・不確実性の増大した予測不可能な社会の到来
   こうした変化は、これまで常識とされてきた知識や方法論、価値観が当てはまらない状況を生み出し、
   これまでの常識を打ち破るようなイノベーションによって新たな市場創造、顧客創造を図り、
   人々のライフスタイルを変えるようなサービス
や商品の開発が求められている。

 ・機能的価値から意味的価値へのシフト
     市場が拡大し、経済が成長を続ける状況においては、機能的価値が極めて重要な時代であった。
   しかし、低成長時代に突入し、人々の基本的な欲求の多くが満たされる現代においてユーザーの価値観やライフスタイルが
   多様化し、製品やサービスを利用することでどういった価値を感じることができるのかをデザインしていくことが
   重要になってきた。

このような時代にフィットしたのがデザイン思考のアプローチだったのです。
図_unit1_3.png

<導入事例>
組織的にデザイン思考を経営戦略として導入し、成功している例として、
P&G、SAP、IBMなどがあります。
ーーー
P&Gの事例
デザイン思考と経営戦略(4)
イノベーション中心の組織に慶応義塾大学教授 奥出直人
2017/8/18付日本経済新聞 朝刊抜粋

 2000年に最高経営責任者(CEO)に就任したA・G・ラフリーが経営を刷新し、同社を急成長させます。 
P&Gではイノベーションを三つの段階に分けて管理しています。最初の段階は、普段の職場から離れた「ジム」と呼ばれる施設でアイデアを討議します。社員の「頭脳訓練場」です。次にプロトタイプを作る施設が隣接しており、エンジニア集団が数百個の単位でプロトタイプを作り、それを10回以上繰り返します。さらに作った製品を人々がどのように購入・使用するかを調べる施設には50台以上のモニターカメラが設置され、模擬店舗での購買行動や製品の使用状況を観察します。
 ジムで検討されたアイデアは、次のエンジニアリングの段階で淘汰され、さらに消費者行動を観察する段階でも淘汰されるのです。金融商品のポートフォリオ管理のように、多くのアイデアに投資し、その中からいくつかが成功すれば、その成功が最初の投資へのリターンになります。
 ラフリーはイノベーションを生み出す経営方針を「すべての中心に消費者を置く」「自社技術にこだわらず、新商品開発の50%は外部の力を活用する」「すべての企業活動がイノベーションのために行われるようにマネジメントする」としています。
 そのため、P&Gはイノベーションの捉え方を大きく変えました。まずチームでイノベーションに取り組むというマネジメントを導入しました。さらに、イノベーションの対象を新商品の開発だけでなく幅広く捉えるようにしたほか、リスク管理能力を高めるために失敗から学ぶ姿勢を徹底したのです。

ーーー

どんなやり方でも導入には反発や副作用があり、それをきちんと理解し、うまく調整しながら進めることが必要不可欠です。P&Gの事例でも、「普段の職場と離れたところで、新しいアイデアを討議する場を持つ」「リスクが大きいからやめるのではなく、金融ポートフォリオのように管理する」など、デザイン思考の強みを最大限に発揮できるようにするための工夫が随所でみられます。

次回のブログでは、「組織へのデザイン思考の導入」を実際に行なった企業の事例から、デザイン思考をうまく機能させるためのポイントをお伝えします。
10年以上デザイン思考のアプローチをお手伝いしているmctならではの視点でお届けできればと考えています。

 
Nanasa Kwan株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Sep 30, 2017 03:09 ある日、チームに新しいメンバーが入ってきたら…〈他者理解について〉

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こんにちは、mctの池田です。めっきり秋めいてきましたね。

最近では、優れたチームをつくるためには、「メンバーの多様性が必要だ」とよく耳にします。確かに、チームに年代・スキル・国籍・価値観など多種多様なメンバーがいると、視点が広がり、議論が豊かになりそうな…気がします。

でも果たして、メンバーに多様性を持たせることだけで、良いチーム作りは成功するでしょうか?


Googleが100人以上の社員にインタビューした結果によると、社内で生産性の高いチームに共通していたのは、「優れた人材を集めてミックスさせたチーム」…という、チーム作りの定石としてよく言われるような傾向を見出すのは難しく、むしろ 「お互いのメンバーのことを理解しようと努力しているのが良いチームだった」とのことです。例えば、相手の気持ちに共感して思いやる、とか、みんなが平等に発言する、といったことです。大事なのは、チームに誰がいるか以上に、チームメンバーがお互いにどう関わり合うか、ということなんですね。

ではチームメンバーがお互いに分かりあうために、私たちは他者理解をどのように深めていけばよいでしょうか? 私が最近気になっている概念として、「アンコンシャス・バイアス」というものがあります。

例えば、米国のCEOには背が高い男性が多い=「背が高いとカリスマ性や統率力がある」という思い込みが、CEO選抜の時に影響を与えているという説があるそうです。それと同じように、日常生活で「インターン」と聞くと「若くて向上心がある人」を想像したり、「帰国子女」と聞くと「英語が堪能な人」、「元ラグビー部」と聞くと「体育会系で体力のある人」を自然とイメージしたり…ということはないでしょうか。でも実際にはみんながイメージ通りというわけにはいかず、なんだか後ろ向きなインターンや、英語よりアラビア語が得意な帰国子女、身体の弱い元ラグビー部もいるかもしれません。また逆に、受け手側にこうした勝手な期待をされてしまい困った、という経験は誰しもあるのではないでしょうか。「関西人なのに話にオチがない!!」など。。

こうした肩書きなどから人に対してイメージを持つことは、日常生活を効率的に、スムーズにさせることもあるので一概に悪いことではないのですが、時には立ち止まって、自分にもそうした「思い込みがある」「その思い込みは誰にとっても当てはまるわけではない」という前提に立ち、自分の中にあるバイアスに自覚的になることが必要かなと最近よく感じます。そうすることで、人に表層的なラベル付けをしてそこで理解をやめてしまうのではなく、その人自身がどんな人かを深く知るきっかけが得られるのではないかと思います。

mctでは現在、こうした「他者理解・チームワーク」をテーマにした研修トレーニングも企画中です。10月4日(水)には、組織の多様性・LGBTの理解促進のための企業研修などを提供しているLetibeeの榎本悠里香さんをゲストにお迎えして、より良いチームワーク、働く人の幸福感醸成について話し合うオープンな勉強会を開催します。チーム作りや他者理解についてご興味のあるみなさま、ぜひお気軽にご参加ください!

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Convivial Salon vol.12

『組織の多様性と幸福度〜LGBTの問題から考える新時代のチームワーク〜』。

10月4日(水)19:00-21:30 @永田町グリッド

http://peatix.com/event/300152

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ちなみに私の好きな映画『マイ・インターン』では、70歳でシニア枠のインターンに採用されたロバート・デ・ニーロが、初めはアン・ハサウェイ演じる女性CEOに「おじいちゃん」扱いされ、全く見向きもされないのですが、これまでの経験値を活かしながらも謙虚な姿勢でみんなのサポート役として信頼を集め、CEOのピンチを救い、最終的には彼女にとってかけがえのない存在になりました(過去のロバート・デ・ニーロ出演作を熱心に観てきたファンにとっては、デ・ニーロがキレないでずっと笑顔なのが逆に怖い!!という感想もあるみたいですが…汗)。秋の夜長におすすめしたい1本です。

 

Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Aug 07, 2017 02:40 実は、ケーススタディ学習には「マンガ」が有効なんです!

みなさん、こんにちは。組織デザインユニットの冨田です。

mctでは、株式会社msc様(マネージメントサービスセンター/http://www.msc-net.co.jp/)との共同メニューとして、「マンガ」を使ったトレーニングプログラムの提供を開始しました。このトレーニングの特徴は、文章ではなく、漫画で表現したケーススタディを教材として用いているところです。

そこで、今回は「マンガの効能」を、「マンガを用いて」ご紹介したいと思います。

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このように、マンガの主な効能には

1.リアルなシチュエーションに没入することができる

2.自らの視点で解釈し、気づきを得ることができる

3.さまざまな立場で考え、視野を広げることができる

といったものがあります。

マンガを用いたトレーニングは、学習者を物語の中に引きこみ、その物語の登場人物として様々な視点で問題を捉え、解決策を考える過程を通じて、学習者を主体的な問題解決へと導きます。そんな一石三鳥な「マンガ」を使ったトレーニングプログラム、ぜひ一度、試してみませんか?

 

 

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mctのマンガ研修では、「チームワーク」のテーマでもトレーニングを提供しています。

◆マンガを使った研修・トレーニングのお問い合わせ・資料請求はこちらから◆

http://mctinc.hs-sites.com/organization_manga

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Misuzu Tomita株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Jul 07, 2017 08:12 チームワークを阻むもの、それは自分の「目」かもしれない

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こんにちは、mct 組織デザインユニットの池田です。

 先日、同僚に誘ってもらい、知る人ぞ知るエンターテイメント、 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」に参加してきました。

 

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とは…

ホームページでは「暗闇のソーシャルエンターテインメント」と題されており、その名の通り、完全に光を遮断した空間の中を、複数人のグループを組んで進んでいき、さまざまな体験をするというものです。

1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケ氏によって発案され、これまで世界39か国以上で開催され、800万人を超える人々が体験されています。http://www.dialoginthedark.com/

 

軽い気持ちで申し込んだものの、当日受付を済ませた後、気持ちが急激に落ち込み始めました。なぜなら、暗闇がめちゃくちゃ苦手であることを急に思い出したからです。どう考えても90分も耐えられる気がしない。

まずは明るいところで、知り合いではない人も含めて8人のグループを組んで出発するのですが、気持ちがすでに動揺しまくっているので、それぞれの人の顔もまったく覚えられませんでした。

そして、段階的に薄暗い部屋へ…。その時、視覚障がい者の男性がアテンド役として、待っていてくれます。私はアテンドがあることを知らなかったので、すごく驚きました。そして、“暗闇のエキスパート” であるこの男性が、適宜声がけをしてくれてすごく頼りになるのです。

 

「今緊張していると思うから、深呼吸しましょう」

…不安でいっぱいの気持ちを察してくれて、ナイスなアシスト! 

 かと思ったら次の瞬間には…、

 

「真っ暗闇なので、目が慣れるということは一切ありません。だから “見る” ことを早くあきらめることです」

 

…怖い、怖すぎる。もう、ここから出してくれ…

と、半ば懇願モードの私におかいまなく、とうとう真っ暗闇の部屋に足を踏み入れることになりました。

 

詳しい内容を書きすぎるとネタバレになるので避けますが、暗闇空間の中で、今日初めて会った8人の人間が、お互いに声をかけあったり、助け合ったり、譲り合ったりしながら、歩を進めていきます。

そして、この体験をしている最中に、私がとても印象的だったことがあります。

 

「みんなと仲良くなるのが、すごく早い…」

 

気がつけば、みんながお互いを気づかい、名前を呼び合い、ついてこれていない人がいれば声をかけて助け合い、最終的には、暗闇の中でお互いに冗談まで言い合える状態になっていました。もちろん、表情も仕草も周りの状況も分からないので、お互いの言葉に注意深く耳を傾け、信頼関係を築いていきます。もし、私たちが目が見える状態で出会っていたら、この短時間で、こうはなっていないだろうなと思います。

私たち人間は、「先入観」を持ってものごとを見てしまいます。その対象が人間であっても、同じです。私自身も、この時の経験から、これまでずいぶんと人の見た目や些細な言動から「この人はこんな人にちがいない」「自分とは仲良くなれそうもない」と勝手に判断し、人と深くコミュニケートする機会を失ってきたのかもしれない、と反省しました。

 

仕事の場面でも同様に、年々問題が複雑化するこれからの時代においては、今後より「チームワーク」が求められます。その時に必要なのは、相手に対する表面的な評価や評論、決めつけではなく、その人自身が「どんな気持ちで、何をしたいと思っているのか」、積極的な対話や共感を通じて、理解を深めていくことではないでしょうか。そんな、基本的で大事なことを、思い出させてもらった貴重な体験でした。

また「先入観を取り払う」ということ以外にも、この「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」には下記のようなチームワークを促進する要素が巧みに散りばめられており、本当によくできた設計だと思いました。ぜひ多くの方に体験していただきたいです。

 

・共通の目標がある(協力して、課せられたアクティビティを完遂する)

・参加者の不安を受け止めながらも、主体性を引き出してくれるファシリテーターの存在

・非日常的なドキドキを共有している一体感、仲間意識

・視覚を失うことで、他の感覚が鋭敏になり、没入状態(フロー)に入る

・相手の声に耳を研ぎ澄ますことで相手の気持ちを感じる力(共感力)が増す

 

チームワークというテーマについては、また引き続き考えてきたいと思います。

 

お薦めしておきながらなのですが…「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は現在、外苑前会場で最後の開催期間中ですが、残念ながら8月末まで全て満席のようです(その後はしばらく移転先を探索されるとのことです)。大阪グランフロントでは「対話のある家」というイベントを定期開催されているようですので、ご興味がおありの方はそちらもぜひ体験してみてください。

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mctのマンガ研修では、「チームワーク」のテーマでもトレーニングを提供しています。

◆マンガを使った研修・トレーニングのお問い合わせ・資料請求はこちらから◆

http://mctinc.hs-sites.com/organization_manga

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Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

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