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Mar 20, 2019 05:13 [Seminar]従業員のためのデザイン思考 ~これからの人事担当に求められる考え方~ vol.2

 

employee_Experience

もうすぐ4月。新入社員が入ってきたり、チーム編成が変わったりして、
組織に新しい風が吹き込む季節になってきました。

チームに新しいメンバーが加わった時、皆さんはどのように受け入れていますか?
新入りのメンバーが組織の文化に早く慣れ、不安を解消し、十分に力を発揮できるように支援する
プロセスのことを「オンボーディングプロセス」と言いますが、
Airbnbでは「Employee Experience」という部署がそのプロセスをしっかりと設計しています。
新しく加入した直後の体験の良し悪しが、その後のメンバーのパフォーマンスに
大きな影響を与えることを理解しているからです。

このオンボーディングプロセスは一例であり、
他にも入社後のスキルアップや生産性向上、社内でのコミュニティ形成など、
あらゆるシーンで従業員経験を向上させることが、
企業の成長にとって欠かせないファクターとなっています。
今は、「顧客中心デザイン」を大事にするのと同じくらい、
「従業員中心デザイン」が求められる時代です。
最新のツール導入、制度の整備といった手段から入るのではなく、
まずは自社の従業員が日々どんな経験をし、どんな満たされていないニーズを抱えているかを
深く知ることから始めてみませんか。

本セミナーでは、過去の事例紹介なども交えながら、
従業員経験を向上させるための取り組みのコツやポイントをご紹介していきます。

※2月21日に実施した「Employee Experienceセミナー」が
ご好評につき、今回は第2弾の開催となります。
前回ご参加いただけなかった方は、ぜひこの機会にご検討くださいませ。


〈本セミナーのポイント〉
・「Employee Experience(従業員経験)の向上」とはどういうことか
・なぜ今必要とされているのか
・どのようなアプローチ方法があるのか

〈本セミナーの受講をおすすめする方〉
・従業員満足・モチベーション向上をミッションとしてお持ちの人事部門や経営企画部門の方
・担当するチームの活性化や信頼関係構築に取り組みたい方


本セミナーへのお申込みやお問い合わせは下記よりお願いいたします。

 詳細・お申込み >

Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Jul 04, 2018 04:13 “Design + Data + Behavior”の交差点 〜イリノイ工科大学デザインスクール主催カンファレンス@シカゴ〜

こんにちは。mctのソレイムです。
2018年5月24〜25日にシカゴで行われた ”Design Intersections” に当社からミーハとソレイムの2名が参加しました。

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“Design Intersections”は、イリノイ工科大学のデザインスクール(以下IIT ID) 主催で今年からスタートした新しいカンファレンスです。テーマは、Design + Data + Behavior。デジタル化が進む中、デザインとその周辺の世界で何が起きているのか、そして、どのような新しい考え方が必要なのかについて、様々なパネルディスカッションやワークショップが二日間を通して行われました。

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出典:IIT ID (https://www.id.iit.edu)

一日目には、130人を超えるデザイナーやデータサイエンティストが集まり、Design + Data + Behaviorの交差点について探りました。データやアルゴリズムの活用などに関する多彩な論点をテーマとした4つのパネルセッションが行われ、GoogleのUXリサーチャーやIBM Watson Healthのデザインディレクターを始めとする豪華な顔触れが話に花を咲かせました。テーマとなったのは、データのネットワークやそれに関するビジネス、データ保護の有用性、データの所有者問題、データ利用に関する透明性や信頼性、そして行動科学やデザインなどの様々な切り口でした。

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二日目には、グループに分かれてのワークショップが行われ、当社のメニューのベースとなっている本 ”101 Design Methods” の著者でもあるVijay Kumar教授や、ストラテジスト/起業家としての顔も持つJohn Cain教授らIIT IDの教員が担当しました。
テーマは、今回のカンファレンスのテーマである "Design + Data + Behavior" を様々な角度から切り取ったものでした。

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様々なテーマのワークショップがあった中で、Vijay Kumar教授のワークショップは「組織内イノベーターのためのリーダーシップ思考フレーム」についてでした。

Kumar教授は、結果を出せるリーダーになるためには、良いデザインをするための手法やスキルだけでなく、スマートでイノベーティブな「考え方」を生み出す能力を得ることが重要だと主張しました。リーダーによって、組織がイノベーションの種を生み出し、現実のものとして育み成功させるためには、信頼感のある「思考フレームワーク」を活用することが必要だということです。

ワークショップでは、様々な思考フレームについて議論が行われました。それらのフレームは、「イノベーションの基本」、「イノベーションを生み出す要因」、「イノベーションの結果」、「イノベーションの影響力」の4つのタイプに分けられていました。

ビジネス業界は効率競争からイノベーション競争にシフトしてきました。このような流れの中で、組織改革のためのイノベーションリーダーシップの重要度は増し、豊かで実用的な知識についてしっかりと考えることが大切になっています。

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出典:IIT ID (https://www.id.iit.edu)

一方、John Cain教授のワークショップは、「ネットワークやデータを活用したプロダクト・サービスのデザイン」がテーマでした。

データと情報が溢れる現代において、産業化時代に台頭した従来のイノベーションのアプローチはもう通用しません。このような時代に、データを利用して価値を創造する機会はどこにあるのか、データバリュープロポジションを魅力的に作るにはどうしたら良いのかなど、データをスマートに活用するためのヒントが散りばめられたワークショップでした。

データ活用の良い事例として挙げられたアメリカのサービスを1つ紹介します。

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出典:Bear Naked Custom (https://www.bearnakedcustom.com/BearNaked)

「Bear Naked Custom」 (https://www.bearnakedcustom.com/BearNaked) は、ケロッグのシリアルブランドで、店の棚にも並んでいますが、オンライン上で材料をカスタマイズし自分のオリジナルシリアルを作ることもできるという商品です。

このサービスを支えているChef WatsonというAIは、多くの人に利用されているレシピサイトから、人気のある味や材料の組み合わせを学習しているそうです。私たちが100万を超える組み合わせの中から好きな材料でシリアルをカスタマイズする時、Chef Watsonは、学習したデータを活用して、選んだ組み合わせの美味さを評価し、カスタマイズのサポートをしてくれます。AIのサポートを受けながら自分だけのシリアルを作れるというだけでも面白そうですが、実際に試してみたところ、わくわくするようなUIでそれが実現できるようになっており、楽しいサービスだと感じました。

Bear Naked Customは、オンラインサービスでユーザーが作ったシリアルのデータを分析して、店に並べるシリアルの開発にも活用しているそうです。

Cain教授のワークショップは、サービスがどのようにどのようにデータを活用しているのかについて学び、考える良い場となりました。

また、レクチャーの中には、プロダクトやサービス、システムが繋がり合って、新しいエコロジーができあがってきている中、人間中心デザインの考え方を活用することが以前にも増して重要になってきているというお話がありました。これは一日目にもよく耳にした内容で、カンファレンス全体を通して、「膨大なデータに目が行きがちな今だからこそ、もっと人間中心で考えよう」という大きなメッセージ性を感じました。

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世界にデータと情報が溢れ、デザインの考え方が変わってきていること、そして世界が変革してきていることは、皆さんも感じていることと思います。IIT IDがこのようなイベントを開催して、この流れにおいて、私たちが何を考えるべきか、どのような考え方を大切にするべきかについて思いを巡らすきっかけをくれたことへの感謝を込めて、締めくくりたいと思います。

ありがとうございました。

Mayuka Soleim株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Jun 04, 2018 11:55 未来の働き方(Future workstyle)

future_workstyleこんにちは。mctの佐藤です。

SNSをウォッチしていると、徐々に人々の仕事感が変化していることを感じます。

最近、フォロワーが1万人を超える、とあるTwitterユーザが「こんなアプリあったらいいんだけどなぁ」とつぶやいたら、なんと、次の日にアプリのプロトタイプが上がってきたという出来事を目の当たりにしました。

そのプログラマーは無償でアプリを作っています。おそらく、仕事も忙しい中で、半ば徹夜で作業したのではないでしょうか。その上に無償。ここで注目したいのは、その彼はお金は手に入れていないが、社会の信用を手に入れたという点です。信用を貯金して、後日、実際のビジネスに活かしているはずです。

落合陽一氏・堀江貴文氏が共著の「10年後の仕事図鑑」にも書かれている内容ですが、今後はどの会社に属するかではなく、自分という個人を信用してくれる人、すなわちフォロワーが何人いるかが大切になってくると言われています。人生100年時代、100歳までいまの会社で働く訳ではないので、それぞれの個人が複数の専門性を持ちながら仕事を変化させながら生きていかなくてはならないという主張です。

同じくSNSで、小学生があるイベントを開催する資金をクラウドファンディングで調達していました。その子はちゃんと自分でSNSの発信をしています。ミッションがクリアなので、共感する人は迷いなくパトロンになりたいと思うでしょう。

絵本「エントツ町のプペル」を制作した西野亮廣さんも、クラウドファンディングで資金を調達し、分業制で同絵本を制作。現在もオンラインサロンの場を設けて、月額1000円で新規プロジェクトに誰でも参加できる状態にしています。新しい「囲い込み」のあり方ですね。

ひとつ誤解を避けなければなりません。もちろん、現在の社会を動かしているのは会社という組織です。会社という組織の素晴らしさは、自動車のように一人では出来ない高度に精緻な商品を組織で生産していけるという点、もしくは、会社という信用度の高い組織を通して他の組織とのコンタクトを図りやすい点でしょう。なので、現時点でフォロワーを増やしている個人ばかりが尊いとは言いたくありません。

ただ、上記の書籍では「人は会社に名前を奪われる」と書いています。あなたは、あなたの名前で商品やサービスを提供したり、あなた自身のフォロワーを増やしていけているでしょうか?もしそれがNoならば、それは名前を奪われた状態かもしれません。

この問題の解決策はすぐには思いつかないですが、今後は、会社という組織も社員が自分の名前を使うこと認め、名前を奪わないようになっていくのではないかと個人的には思っています。言い換えると、自分という個人を認めてくれる会社が魅力的な会社になっていくのではないでしょうか。

大きな会社の場合、その体制をすぐに実現することは非常に難易度高いでしょう。ただ、ひとつ朗報があるとすれば、関与しているプロジェクトが成功したときは社会的インパクトも大きく、後に大きな個人のアピールにも使えるだろうという点が挙げられるでしょう。

ということで、企画力を高めプロジェクトを成功させ、それを個人の社会的信用度アップに活用し、自分という個人のフォロワーを増やしておき、まだまだ遠い将来かもしれませんが、新しい仕事にシフトする必要性が生じたときにそれを活用して有利に進める。それがこれからの仕事のスタイルなんだろうと思うところです。そしてそれは、AIに奪われることのない仕事のスタイルになるでしょう。

mctとしては、まずは現在の「あなたの」プロジェクトの成功に向けて、少しでもお手伝いできますと幸いです。

Takeshi Sato株式会社mct ストラテジスト

Apr 13, 2018 09:00 組織へのデザイン思考導入事例 ― サントリー食品インターナショナル様

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こんにちは。組織デザインユニットの渡邉です。近年「デザイン思考」の重要性が高まっており、以前mctブログでも「なぜ組織にデザイン思考が必要なのか」という記事をご紹介しました。今日は、デザイン思考の社内導入事例として、サントリー食品インターナショナル様のデザイン思考ワークショップをmctがサポートした様子をご紹介します!

サントリー食品インターナショナル様では、R&Dメンバー一人ひとりが、普段の商品開発プロセスにデザイン思考の考え方を活用していけるようになるための「サントリー流 デザイン思考ガイドブック」を作成されています。今年3月に開催されたグローバルミーティングでは、そのデザイン思考ガイドブックのお披露目と、メンバー間での理解・共有を深めることを目的としてデザイン思考ワークショップが実施されました。参加者は世界各国、各地域の支社から招集され、研修後は、全社的にデザイン思

考の活用にドライブをかかることが最終的なゴールでした。

ワークショップの構成は2部にわかれており、mctではワークショップの計画と実施をサポートさせていただきました。

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■マインドセット

第1部のマインドセットパートでは同志社女子大学 現代子ども学科 教授の上田信行先生をお招きしました。上田先生はMITメディアラボの客員教授のご経験があり、人が楽しく学び、働くための場の環境デザインを研究されています。さらに上田先生のゼミの学生さん13名もお呼びしました。(上田ゼミではゼミ生のことを「girlsBand」と呼び、音楽バンド…ではなくワークショップの企画運営と中心とした活動を行っています。)

今回のワークショップでは1日のスタートとして、上田先生とgirlsBandのみなさんとデザイン思考のためのマインドセットを経験から学ぶパートを設計・実施しました。マインドセットのセットアップは、デザイン思考を推進する上での「エンジン」とも言える最も重要なポイントの一つです。

ワークショップはgirlsBandのダンスからスタート!

 

一気に場の雰囲気を変え、全員でダンスを踊るワークに入ります。最初はわけもわからず手拍子をしていただけの参加者がどんどんと引き込まれ、自分たちも身体を動かしてダンスを踊れるようになります。10分程度のレクチャーでほとんどの参加者が見事に振り付けを覚えていました!

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もう一つ行ったワークがレゴの高積みです。音楽がなる中でグループごとにレゴをできるだけ高く積み上げていきます。積み方は各グループの自由。チームごとに試行錯誤しながらどんどんタワーを高くしていきます。途中に作戦を練る時間もあり、タワーの積み方や役割分担などチームカラーがよくでていました。頭上をはるかに超える高さのレゴ−タワーが完成したときには、自然と歓声があがるほど全員が夢中になって取り組んでいました。

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デザイン思考を推進していく手法は様々なものがありますが、マインドセット(心の持ち方)をととのえ、組織メンバーが同じ姿勢や態度で取り組むことでスピードは何倍も加速していきます。チーム一丸となって問題に取り組み、失敗を恐れずにチャレンジしていける環境を提供すること。そしてそこでの経験を思い切り楽しんでもらうことがマインドセットの獲得では大切です。

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■プロセス

第2部は、サントリー食品インターナショナル様独自で開発されたガイドブックをもとにデザイン思考のプロセスを学ぶパートです。今回は「女子大生がワクワクする新しい商品・サービスを開発する」をテーマにワークショップを行いました。

 次世代の消費の中心となってくミレニアル世代の女子大生ですが、彼女たちの実態はよく知ろうと思わなければわからないことだらけです。ワークショップではデザイン思考のプロセスに合わせ、理解からアイデアの具体化までを段階的に実施しました。それそれのフェーズごとにレクチャーを交えつつ実践と理論を繰り返し、デザイン思考を習得していきます。

理解のフェーズでは密着ビデオやデプスインタビュービデオ、食日記などを中心に情報のインプットを行いました。参加メンバーは彼女たちの言動に驚きの連続だったようです。こうした発見が次のアイデアのインスピレーションになっていきます。また、自分たちの五感を使って、彼女たちが普段飲んでいる飲み物を実際に味わってみたり、直接対話を重ねたりしていくことで、彼女たちへの考え方や価値観に対する理解が深まっていく様子が印象的でした。

 

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さらにデータを解釈するフェーズではインプットした情報をもとにユーザーのインサイトを定義します。商品の具体的なアイディアをだすフェーズでは抽出したインサイトから具体的な商品・サービスアイディアをみんなで考えていきました。

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デザイン思考のアプローチはユーザー中心の設計が重要となります。ワークショップでは女子大生の意見を常に取り入れ、アイディアをどんどん修正していく場面がいくつもみられました。プロトタイプをつくっては壊し、またつくっては壊す作業を繰り返し、最終的に6つのアイディアが完成しました。

完成したアイディアに対して女子大生からフィードバックをもらい、さらにそれを改良したところでワークショップは終了しました。

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デザイン思考を組織に導入するためには手法だけを導入するのではなく、それに取り組む人たちが広い視野を持ち、ポジティブなマインドセットである必要があります。とはいえ、マインドだけセットされていても、具体的な手段がなければ実務を遂行していくことはできません。デザイン思考推進のために、今回ご紹介したワークショップのような「マインドセット」と「プロセス」の両軸からのアプローチの必要性がより高まっていきそうです。

※この記事はサントリー食品インターナショナル様の許可を得て掲載しています。

 

Saki Watanabe株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Jan 29, 2018 02:46 なぜ組織にデザイン思考が必要なのか?  − 2 −

前回に引き続き、デザイン思考を先駆けて取り入れた企業の事例を紹介します。
これらの企業の共通点としては、下記の3つのポイントを踏襲していることが挙げられます。

  1)  単発のイノベーションを超えて、組織がイノベーティブであり続けることを目指す
  2)組織構造、プロセス、カルチャー、評価基準などの変革を取り組みに含める
  3)従業員のモチベーションを重視し、時間をかけてカルチャーを醸成する

各企業が実行している様々な施策のうち、部分的な紹介になりますが、具体的な工夫を見て行きましょう。


SAP
社外の安全なところで種を撒き、育てる

SAPは、ドイツに本社を置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社。1990年代後期から2000年初期、SAPは主力商品であるERP(統合基幹業務システム)ソフトの成功の後、次の新ビジネス開発に向け模索していたが、そう簡単には進まなかった。その原因を、SAP創業者の1人であるハッソ・プラットナー氏は、2016年の日経ビジネスのインタビューでこのように答えている。

「原因ははっきりしていた。既存のソフトと収益を食い合うのではないか、という懸念が社内から起きたんだ。(中略) 社内では既存の事業を脅かすような大胆な製品はつくれない。それで、どうしたか。私は社内の影響が何もおよばない、自由な環境で研究に取り組むことにしたんだ」 
日経ビジネスオンライン SAP創業者「イノベーションのジレンマ」を語る  https://www.sapjp.com/blog/archives/7038:より引用)

そして、自ら設立した社外の組織(情報技術研究のための大学・大学院)で、会社の考え方に凝り固まっていない学生たちとデザイン思考アプローチを用いて研究を重ね、次世代ERPの根幹をなす技術のアイデアを生み出したという。

hasso_plattner_Institute_hp.png
ハッソ・プラットナー氏が設立し、次世代ERPのための技術研究を行なったHasso Plattner InstituteのHP
(出典:https://hpi.de/en/channel-teaser/studium/design-thinking-for-students-of-all-disciplines.html

▶︎デザイン思考に限らず、新しい考え方・アプローチを社内組織に導入する際には摩擦や抵抗がつきものです。新しい動きを潰しにかかってくる抵抗勢力から隔離し、成功実績を作ってから本格導入するという考え方はよく聞くものの、できるだけ気づかれないよう徹底して伏せておいたのが功を奏したようです。

 

Whirlpool
導入段階ではインプットの目標/評価基準を重視する
Whirlpoolは、米国屈指の白物家電メーカー。従業員は約6万7千人、売上高は約1.5兆円にのぼる。
これほどの巨大組織でイノベーションを起こした成功例として、
今では様々な企業からベンチマークの対象として見られているが、1999年頃、Whirlpoolは決してイノベーティブな企業ではなかった。凡庸な「メーカー」から、「秀逸な貿易販売組織」そして「カスタマードリブンのブランド企業」に変革を遂げるべく、組織改革が行われた。まずWhirlpoolは、「ブランドに対するカスタマーロイヤルティを作り出すこと」を目指した。それが最終的には継続的な利益成長につながると考えたのだ。それを元に慎重に企業戦略のブループリントを作成したが、それがどんなに良くできた内容であれ、企業に根付くには、長期的な導入プロセスが必要であると考えた。その際に考案されたのが下記の「The Embedded innovation S-Curve」というプロセスだ。

Unleashing Innovation.png

(出典:『Unleashing Innovation: How Whirlpool Transformed an Industry』Nancy Tennant Snyder  (著),‎ Deborah L. Duarte (著))

イノベーションの初期段階では「アウトプットよりもインプット重視」とし、少数精鋭のメンバーに自社に合ったフレームワーク・ツールを開発させ、それを他のメンバーに学ばせるという期間に当てた。Whirlpoolがかけた時間は、2001年から2005年の約5年間。ここでは成果測定の基準も、何人にトレーニングしたか、どれだけの発見があったか、といったインプットにフォーカスした項目で設計されている。そしてやがてブレークスルーポイントに達し、いくつかの成功実績が挙がってきた段階で、アウトプット(利益などの目に見える結果)の測定を始めた。継続的な改善というフェーズにたどり着くまで、おおよそ10年間がかかったという。


▶︎Whirlpoolが成功したポイントは、長期的な視点で組織変革のプロセスを設計しただけでなく、このS-Curveのプロセスに合わせて評価の基準まで設計したところにあります。企業として目指すべきビジョンと、時間に沿った段階的な目標・基準が合わさって初めて組織への浸透が図れることが理解できる事例です。

 

Hyatt
従業員エンゲージメントをベースにカルチャーを育てる

ハイアット ホテルズ アンド リゾーツは、米国に本拠地を置き、約50か国で548以上のホテルを展開する世界有数のホテルブランド。 2011年、同社は過去最高の売上高、株価の急騰、従業員評価を得ていた。だがハイアットのリーダー達は、顧客の期待がより高度に変化しており、ブランドロイヤリティが徐々に低下しているという調査結果に危機感を覚え、スタンフォード大学のd.schoolでデザイン思考を学び、組織改革に乗り出した。

彼らは、「なぜ、私たちは変わる必要があるのか?」と自分たち自身に問いかけることから始めた。そして従業員の声を聞き、彼らにとって重要なことは何か、ゲストとの間にどんなことが起こっていたのか、またゲストはなぜ旅をするのか、実際にはどんな体験をしているのかについて深く理解した。そこで自分たちの提供している体験があまりに画一的すぎ、顧客に対してポジティブな印象を残せていないといった問題点を発見した。

その後、9つのホテルを「Innovation Lab」にして、経営幹部や実際のゲストを招いて改善案を体験してもらい、実験を繰り返すことで解決策を見出していった。その後も、世界中のエリアマネージャーが新しいアイデアを実験できるように支援。そこから、「早く失敗し、そこからの学びをシェアする」、ラピットプロトタイピングの文化が培われていった。

Hyatt_idea.png
従業員がイノベーションラボに集結し、顧客体験を改善するためのアイデアを考えている様子
(出典:Hyatt transforms nine hotels into innovation labs
https://ariegoldshlager.wordpress.com/2013/07/22/hyatt-transforms-nine-hotels-into-inovation-labs/ 

Chief HR officerのRobb Webb氏は、ハイアットが目指すブランドは90000人の従業員の力によってもたらされるとして、以下の5点を挙げている。

5_point.jpg(Building a Strong Workforce in Culturally Conscience Hotels Worldwide https://profilemagazine.com/2012/hyatt-hotels/ より引用)

▶︎今回は書ききれなかったのですが、ハイアットの事例で興味深いのは、チェックイン時のちょっとした改善と、デジタルテクノロジーやソーシャルメディアを取り込んだ破壊的なイノベーションを分けるのではなく、従業員が積極的に関わりながら、一体的にマネジメントしているところです。デザイン思考がカルチャーとして浸透し、継続的な変革・成長に繋がっている好例と言えます。

いかがでしたでしょうか。私も今回事例について調べていく上で、絶対的にこれが正しいというプロセスは存在しないものの、各企業のビジョンや個性にフィットさせた(慎重にカスタマイズした)導入の仕方を、根気よく模索していくことが結局近道なのかと学びました。そのようなプロセスや方法論を知る一方で、個人的には、人は心の底から「それはいい、やってみたい!」と共感できたものにしか真剣に取り組めないのかなとも思います。私たちがデザイン思考を知った時の驚きやワクワクを、一人でも多くの方に知っていただけるようなお手伝いができればと考えています。

Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

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