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Jan 08, 2019 05:11 デザイン思考と新事業開発

 

design Thinking&new business

大河ドラマ「西郷どん」がエンディングを迎えました。
愛に溢れたリーダーが時代を切り開いていく実行力に魅了されました。

さてそんな中、
西郷どんの地元薩摩の島津藩に伝わるとされる「男の順序」という教えを見かけました。

  男の順序   1 何かに挑戦し、成功した者
 2 何かに挑戦し、失敗した者
 3 自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手助けをした者
 4 何もしなかった者
 5 何もせず批判だけしている者


2019年はどのような1年にしていきますか?
「何もせず批判だけしている者」ではなく、失敗してでも新しいことに挑戦する1年にして、自分を高めていきましょう。

mctでは新規事業開発プログラムのエッセンスを抜粋し、
バズワードとなっている「リフレーム」や「リーンスタートアップ」を具体的にどのように活用していくのか、事例を交えながらのセミナーを予定していますので、2019年最初の挑戦としてぜひご参加ください。


< 本セミナーのポイント >
・リフレームによる機会領域の探索
・リーンキャンバスの具体的な活用
・ビジネスモデルキャンバスとの連携
・顧客インタビューの意識

日時
2019 年 2月 1日(金)15:00-17:00
※セミナー終了後 17:00-18:00まではQ&Aやネットワーキングタイムになります。

会場
(株)大伸社 本館1階「chika」
東京都渋谷区千駄ヶ谷2-9-9 <Access>

参加費
無料

定員
30名(定員になり次第お申込みを締め切らせていただきます)

※申し訳ございませんが、
定員に達しましたのでお申込みを締め切らせていただきました。
またのご参加をお待ちしております。

Fumihiro Shimono株式会社mct ストラテジスト

Jul 04, 2018 04:13 “Design + Data + Behavior”の交差点 〜イリノイ工科大学デザインスクール主催カンファレンス@シカゴ〜

こんにちは。mctのソレイムです。
2018年5月24〜25日にシカゴで行われた ”Design Intersections” に当社からミーハとソレイムの2名が参加しました。

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“Design Intersections”は、イリノイ工科大学のデザインスクール(以下IIT ID) 主催で今年からスタートした新しいカンファレンスです。テーマは、Design + Data + Behavior。デジタル化が進む中、デザインとその周辺の世界で何が起きているのか、そして、どのような新しい考え方が必要なのかについて、様々なパネルディスカッションやワークショップが二日間を通して行われました。

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出典:IIT ID (https://www.id.iit.edu)

一日目には、130人を超えるデザイナーやデータサイエンティストが集まり、Design + Data + Behaviorの交差点について探りました。データやアルゴリズムの活用などに関する多彩な論点をテーマとした4つのパネルセッションが行われ、GoogleのUXリサーチャーやIBM Watson Healthのデザインディレクターを始めとする豪華な顔触れが話に花を咲かせました。テーマとなったのは、データのネットワークやそれに関するビジネス、データ保護の有用性、データの所有者問題、データ利用に関する透明性や信頼性、そして行動科学やデザインなどの様々な切り口でした。

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二日目には、グループに分かれてのワークショップが行われ、当社のメニューのベースとなっている本 ”101 Design Methods” の著者でもあるVijay Kumar教授や、ストラテジスト/起業家としての顔も持つJohn Cain教授らIIT IDの教員が担当しました。
テーマは、今回のカンファレンスのテーマである "Design + Data + Behavior" を様々な角度から切り取ったものでした。

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様々なテーマのワークショップがあった中で、Vijay Kumar教授のワークショップは「組織内イノベーターのためのリーダーシップ思考フレーム」についてでした。

Kumar教授は、結果を出せるリーダーになるためには、良いデザインをするための手法やスキルだけでなく、スマートでイノベーティブな「考え方」を生み出す能力を得ることが重要だと主張しました。リーダーによって、組織がイノベーションの種を生み出し、現実のものとして育み成功させるためには、信頼感のある「思考フレームワーク」を活用することが必要だということです。

ワークショップでは、様々な思考フレームについて議論が行われました。それらのフレームは、「イノベーションの基本」、「イノベーションを生み出す要因」、「イノベーションの結果」、「イノベーションの影響力」の4つのタイプに分けられていました。

ビジネス業界は効率競争からイノベーション競争にシフトしてきました。このような流れの中で、組織改革のためのイノベーションリーダーシップの重要度は増し、豊かで実用的な知識についてしっかりと考えることが大切になっています。

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出典:IIT ID (https://www.id.iit.edu)

一方、John Cain教授のワークショップは、「ネットワークやデータを活用したプロダクト・サービスのデザイン」がテーマでした。

データと情報が溢れる現代において、産業化時代に台頭した従来のイノベーションのアプローチはもう通用しません。このような時代に、データを利用して価値を創造する機会はどこにあるのか、データバリュープロポジションを魅力的に作るにはどうしたら良いのかなど、データをスマートに活用するためのヒントが散りばめられたワークショップでした。

データ活用の良い事例として挙げられたアメリカのサービスを1つ紹介します。

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出典:Bear Naked Custom (https://www.bearnakedcustom.com/BearNaked)

「Bear Naked Custom」 (https://www.bearnakedcustom.com/BearNaked) は、ケロッグのシリアルブランドで、店の棚にも並んでいますが、オンライン上で材料をカスタマイズし自分のオリジナルシリアルを作ることもできるという商品です。

このサービスを支えているChef WatsonというAIは、多くの人に利用されているレシピサイトから、人気のある味や材料の組み合わせを学習しているそうです。私たちが100万を超える組み合わせの中から好きな材料でシリアルをカスタマイズする時、Chef Watsonは、学習したデータを活用して、選んだ組み合わせの美味さを評価し、カスタマイズのサポートをしてくれます。AIのサポートを受けながら自分だけのシリアルを作れるというだけでも面白そうですが、実際に試してみたところ、わくわくするようなUIでそれが実現できるようになっており、楽しいサービスだと感じました。

Bear Naked Customは、オンラインサービスでユーザーが作ったシリアルのデータを分析して、店に並べるシリアルの開発にも活用しているそうです。

Cain教授のワークショップは、サービスがどのようにどのようにデータを活用しているのかについて学び、考える良い場となりました。

また、レクチャーの中には、プロダクトやサービス、システムが繋がり合って、新しいエコロジーができあがってきている中、人間中心デザインの考え方を活用することが以前にも増して重要になってきているというお話がありました。これは一日目にもよく耳にした内容で、カンファレンス全体を通して、「膨大なデータに目が行きがちな今だからこそ、もっと人間中心で考えよう」という大きなメッセージ性を感じました。

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世界にデータと情報が溢れ、デザインの考え方が変わってきていること、そして世界が変革してきていることは、皆さんも感じていることと思います。IIT IDがこのようなイベントを開催して、この流れにおいて、私たちが何を考えるべきか、どのような考え方を大切にするべきかについて思いを巡らすきっかけをくれたことへの感謝を込めて、締めくくりたいと思います。

ありがとうございました。

Mayuka Soleim株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

May 14, 2018 01:00 優れた起業家の意思決定理論「エフェクチュエーション」

こんにちは。mctの鶴森です。
「エフェクチュエーション」という言葉をご存知ですか。
「エフェクシュエーション」とは
バージニア大学ダーデン経営大学院のSaras Sarasvathy教授が提唱している理論で、成功した企業の創業者を研究して導き出した、優れた起業家の意思決定の理論です。それ以前は、起業家の特徴は、生まれ持った資質や運などで語られていたのですが、共通の理論や思考プロセスを体系化したことで、注目されてました。(邦訳「エフェクチュエーション」碩学舎、サラス・サラスバシー 著)

Sarasvathy教授は、エフェクチュエーションの反意語として、「コーゼション」を挙げています。 「コーゼション」とは、目的からスタートし、目的を達成するには何をすればいいかを考え、特定の結果を生み出すための手段を選択するという意思決定プロセスのことを差します。STPマーケティングなどの教科書的なアプローチがコーゼションにあたるので、イメージしやすのではないでしょうか。その前提には、未来は不確定なものだが、できるだけ予測して進めていく「未来は予測できるかぎりコントロールできる」という考えがあります。

一方、エフェクチュエーションは、特定の手段からスタートして、それらの手段を使って何ができるかを問い、可能な限りの結果をデザインしていくというアプローチです。その前提には未来は不確定なものだから、自ら影響を与え変えていくものであり「未来はコントロールできる限り予測する必要はない」という考えがあります。

比喩として、エフェクチュエーションは手持ちの生地を自由に組み合わせながら全体像を作り上げていくパッチワークキルトのようなもの、コーゼションは全体像が見えていてピースを埋めていくジグソーパズルのようなものに喩えられます。スクリーンショット 2018-05-10 12.47.22

「手段からスタートして結果をデザインする」「未来はコントロールできる限り予測する必要はない」といわれても具体的にどう行動すればよいのかイメージしにくいですが、Sarasvathy教授はそのためのテクニックを5つの原則として具体化しています。

エフェクチュエーションの5つの原則(熟達した起業家の意思決定基準)

1)「手中の鳥」の原則
自分が今持っている手段「自分は誰か、何を知っているのか、誰を知っているのか」からスタートして、可能な結果をデザインする。(⇔コーゼションでは、目的や特定の結果からスタートして手段を選択する)

2)「許容可能な損失」の原則
いくらまでなら損してもよいかコミットする。(⇔コーゼションでは、いくら儲かるのかリターンを最大化することに焦点を合わせる

3)「クレイジーキルト」の原則
顧客や競合をパートナーとして交渉し、ステークホルダーが提供してくれる資源を柔軟に組み合わせて価値のあるものを作りだす。(⇔コーゼションでは、顧客や競合を自分と切り分けて分析の対象とする

4)「レモネード」の原則
不確実性や予期せぬ出来事をリソースと捉え梯子として活用する。すっぱいレモンをつかまされたら、レモネードを作れという格言があるそうです。(⇔コーゼションでは、不確実性を避け、克服し、適応する

5)「飛行中のパイロット」の原則
予測に頼らず、常に状況監視とコントロールを怠らない。それは予想外の機会を知る手段であり、最悪の自体を克服するための鍵。(⇔技術年表や社会経済学的なトレンドのみを活用する

ここまで、エフェクチュエーションとコーゼションを対比させて見てきましたが、どちらが優れているということではありません。企業のライフサイクルにおいて0→1フェーズではエフェクチュエーションが、1→10ではコーゼションが有効で、場面に応じて双方のアプローチを組み合わせながら用いることが重要と言われています。

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mctが提供するメニューにも、エフェクチュエーションと相性がよい手法があります。
・顧客をステークホルダーと捉えて一緒に価値を作っていく「コ・クリエーション」
・短期間でデザイン上の課題の発見とインタビューによる学習を繰り返す「デザインスプリント」
・業界外のトレンドを手軽に具体的に知るための「インスピレーションソースブック」
など
ご興味のある方はぜひお問い合わせください。 

Shinpei Tsurumori株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト

Apr 13, 2018 09:00 組織へのデザイン思考導入事例 ― サントリー食品インターナショナル様

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こんにちは。組織デザインユニットの渡邉です。近年「デザイン思考」の重要性が高まっており、以前mctブログでも「なぜ組織にデザイン思考が必要なのか」という記事をご紹介しました。今日は、デザイン思考の社内導入事例として、サントリー食品インターナショナル様のデザイン思考ワークショップをmctがサポートした様子をご紹介します!

サントリー食品インターナショナル様では、R&Dメンバー一人ひとりが、普段の商品開発プロセスにデザイン思考の考え方を活用していけるようになるための「サントリー流 デザイン思考ガイドブック」を作成されています。今年3月に開催されたグローバルミーティングでは、そのデザイン思考ガイドブックのお披露目と、メンバー間での理解・共有を深めることを目的としてデザイン思考ワークショップが実施されました。参加者は世界各国、各地域の支社から招集され、研修後は、全社的にデザイン思

考の活用にドライブをかかることが最終的なゴールでした。

ワークショップの構成は2部にわかれており、mctではワークショップの計画と実施をサポートさせていただきました。

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■マインドセット

第1部のマインドセットパートでは同志社女子大学 現代子ども学科 教授の上田信行先生をお招きしました。上田先生はMITメディアラボの客員教授のご経験があり、人が楽しく学び、働くための場の環境デザインを研究されています。さらに上田先生のゼミの学生さん13名もお呼びしました。(上田ゼミではゼミ生のことを「girlsBand」と呼び、音楽バンド…ではなくワークショップの企画運営と中心とした活動を行っています。)

今回のワークショップでは1日のスタートとして、上田先生とgirlsBandのみなさんとデザイン思考のためのマインドセットを経験から学ぶパートを設計・実施しました。マインドセットのセットアップは、デザイン思考を推進する上での「エンジン」とも言える最も重要なポイントの一つです。

ワークショップはgirlsBandのダンスからスタート!

 

一気に場の雰囲気を変え、全員でダンスを踊るワークに入ります。最初はわけもわからず手拍子をしていただけの参加者がどんどんと引き込まれ、自分たちも身体を動かしてダンスを踊れるようになります。10分程度のレクチャーでほとんどの参加者が見事に振り付けを覚えていました!

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もう一つ行ったワークがレゴの高積みです。音楽がなる中でグループごとにレゴをできるだけ高く積み上げていきます。積み方は各グループの自由。チームごとに試行錯誤しながらどんどんタワーを高くしていきます。途中に作戦を練る時間もあり、タワーの積み方や役割分担などチームカラーがよくでていました。頭上をはるかに超える高さのレゴ−タワーが完成したときには、自然と歓声があがるほど全員が夢中になって取り組んでいました。

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デザイン思考を推進していく手法は様々なものがありますが、マインドセット(心の持ち方)をととのえ、組織メンバーが同じ姿勢や態度で取り組むことでスピードは何倍も加速していきます。チーム一丸となって問題に取り組み、失敗を恐れずにチャレンジしていける環境を提供すること。そしてそこでの経験を思い切り楽しんでもらうことがマインドセットの獲得では大切です。

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■プロセス

第2部は、サントリー食品インターナショナル様独自で開発されたガイドブックをもとにデザイン思考のプロセスを学ぶパートです。今回は「女子大生がワクワクする新しい商品・サービスを開発する」をテーマにワークショップを行いました。

 次世代の消費の中心となってくミレニアル世代の女子大生ですが、彼女たちの実態はよく知ろうと思わなければわからないことだらけです。ワークショップではデザイン思考のプロセスに合わせ、理解からアイデアの具体化までを段階的に実施しました。それそれのフェーズごとにレクチャーを交えつつ実践と理論を繰り返し、デザイン思考を習得していきます。

理解のフェーズでは密着ビデオやデプスインタビュービデオ、食日記などを中心に情報のインプットを行いました。参加メンバーは彼女たちの言動に驚きの連続だったようです。こうした発見が次のアイデアのインスピレーションになっていきます。また、自分たちの五感を使って、彼女たちが普段飲んでいる飲み物を実際に味わってみたり、直接対話を重ねたりしていくことで、彼女たちへの考え方や価値観に対する理解が深まっていく様子が印象的でした。

 

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さらにデータを解釈するフェーズではインプットした情報をもとにユーザーのインサイトを定義します。商品の具体的なアイディアをだすフェーズでは抽出したインサイトから具体的な商品・サービスアイディアをみんなで考えていきました。

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デザイン思考のアプローチはユーザー中心の設計が重要となります。ワークショップでは女子大生の意見を常に取り入れ、アイディアをどんどん修正していく場面がいくつもみられました。プロトタイプをつくっては壊し、またつくっては壊す作業を繰り返し、最終的に6つのアイディアが完成しました。

完成したアイディアに対して女子大生からフィードバックをもらい、さらにそれを改良したところでワークショップは終了しました。

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デザイン思考を組織に導入するためには手法だけを導入するのではなく、それに取り組む人たちが広い視野を持ち、ポジティブなマインドセットである必要があります。とはいえ、マインドだけセットされていても、具体的な手段がなければ実務を遂行していくことはできません。デザイン思考推進のために、今回ご紹介したワークショップのような「マインドセット」と「プロセス」の両軸からのアプローチの必要性がより高まっていきそうです。

※この記事はサントリー食品インターナショナル様の許可を得て掲載しています。

 

Saki Watanabe株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Feb 05, 2018 04:50 観光における人間中心のデザインの重要性

こんにちは、CXデザインユニットの冨田です。
世の中には古くから「資本論」「形態論」「懐疑論」など、様々な分野において”論”というものが存在します。
最近私が興味を惹かれたのは、観光における”論”です。
そのきっかけとなったのは、『新・観光立国論』(東洋経済,2015)という本でした。

この本は、イギリス人アナリストのデービッド・アトキンソン氏によって書かれたもので、氏の前職であるアナリストとしての分析的な視点と、伝統文化を嗜みながら日本で暮らす、いち在住者としての視点が織り交ぜてあり、大変ユニークな切り口の本となっています。

tourist.png

ではさっそくですが、タイトルにもなっている”観光立国”とは何でしょうか?
本書では、”その国が持つ特色ある自然環境、都市景観、美術/博物館などを整備することで、国内外の観光客を誘い込み、観光ビジネスやそこから波及する雇用など、人々が落とすお金を、国を支える基盤の1つとして確立すること。”(『新・観光立国論』p. 46より引用 )とされています。これ以上に明快な定義はないようですが、少なくとも”観光立国”と呼ぶにふさわしい最低限の基準は存在しており、それについては下記のように言及されていました。

最低限の基準、それは国連世界観光機関(UNWTO)による、世界の観光における指数です。
本書では、いくつかあげられている指数の中でも、観光が国の経済を支える基盤になっていることを示すものとして、”全世界のGDPに対して観光産業が占める数値=9%”を明快な指数としてあげています。これを世界平均と捉えるならば、少なくともこの指数を上回っていることが、その国が”観光立国”と言える最低条件です。さて、日本はどうかと言うと…”0.4%”と、残念ながら世界平均を大きく下回っているのです。漠然と、京都周辺が海外からの観光客で賑わっている光景をイメージしながら、国内には多くの観光収入がもたらされていると思っていた私には、これは意外な事実でした。

ではどうしたら、日本は”観光立国”になれるのでしょうか?
本書では、4つの要素、”気候”、”自然”、”文化”、”食事”をできるだけ多く揃え、複数の観光を提供するほど、様々なタイプの観光客を受け入れることができ、観光収入が上がって観光立国に近づくとしています。こちらは、日本は、過ごしやすい温帯の気候、地方に残る手付かずの雄大な自然、歌舞伎や能などの伝統文化とアニメなどの現代文化、古くからある和食や日本国内で進化を遂げた洋食など、4つの要素が兼ね備えられているのです。「なんだ、やっぱり日本は観光のポテンシャルはあるんじゃないか。」と一安心してしまいそうですが、これだけで終わりではないのです。ただ要素を揃えているだけでは”観光立国”とは言えず、観光はお客さんが来て初めて成り立つものである以上、これらの資源をお客さんに響く形でアピールしていかなければなりません。

本書ではそのために必要な3つの姿勢が書かれていますが、それらは私が普段取り組んでいる、人間中心デザインのプロセスと非常に親和性の高いものだと感じました。

1.観光客の多様性を知る
何を目的に日本へやってくるかは、観光客によって様々です。ひと口に日本にやってくる中国人観光客といっても、デパートで高級ブランドを爆買する層もいれば、ドラッグストアで化粧品を爆買する層や、100円ショップを楽しむ層もいます。ひと口に外国人観光客とくくるのではなく、その多様性を探り、それぞれがどのような立場で何を求めているのかを知ることが、よりターゲットに響く観光コンテンツを作ることにもつながります。

2.サービスを差別化する
花見のシーズンになると、有名なスポットでは、入場規制がかかることもあります。そのような状況の中で、1泊500万円のホテルに泊まる富裕層の観光客に「これがルールですから最後尾に並んでください」と説明して、どれだけの人が素直に従うでしょうか?サービスを選ぶ主導権は観光客にあります。そこで、観光客を一律に扱うのではなく、相手の求めるサービスに応じて価格設定を変えることで、あらゆるニーズに細かくターゲティングして応えることが可能になります。

3.お客さんに伝わる表現をする
文化財などの観光資源を綺麗に整えておくだけでなく、展示パネルの表記に英語を入れたり、音声ガイドをつけてより詳しい解説をするなど、まずは多くの人に見知ってもらうための工夫が必要です。そうすることで、さらに文化的な背景や歴史など、見る人の興味の幅を広げ、そこから別な観光への興味を持ってもらうきっかけにもなります。近年では、伊勢神宮の『せんぐう館』で、外国人観光客に無料でペン型の多言語端末を渡しており、これが好評を博しているようです。

顧客と同じ目線から相手が何を求めているか理解することで、より相手に響くサービスを提供し、さらにはその先にあるニーズを引き出す。観光という分野についてもこのことが当てはまると知り、改めて人間中心デザインのプロセスの重要性と可能性を感じた1冊となりました。

Misuzu Tomita株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

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