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May 30, 2016 06:45 デザイナーの日々の活動としての"ユーザー中心デザイン"

"ユーザー中心"とは一体どのようなことなのか?

"ユーザーを製品・サービスに慣れさせる"のではなく、"ユーザーの実際の行動に合わせたものを作るユーザー中心デザイン"は、それがどの分野のデザイナーであろうと、またそれが製品であろうとサービスであろうと可能です。

ユーザー中心デザインを進めるには3つの段階があり、それらの段階を通じて、ユーザーとデザイナーとの距離は縮まっていきます。デザイナーは、やりやすいレベルを選択してそれを進めることもできますし、もしくはレベル1から順に進めていくこともできます。


レベル1 :人々から学ぶ
レベル2 :人々と共感する
レベル3 :コ・デザインする

 


レベル1: 人々から学ぶ

1.jpgのサムネール画像人々の発言、行動により注意を向けることで、デザイナ-は"ユーザー中心"となることができます。このレベルでは、デザイナーは少し距離を置いて人々(ユーザー)を観察していきます。
人々から学ぶには、ユーザーに語らせ、話している内容に耳を傾けることが必要です。この時、実際に顔を合わせて会話するほうがよいでしょう。会話を進めるための準備として、いくつか質問を用意しておき、より自然な状態(日常に近い状態)で会話を進めていくことも重要です。

また、彼らの日常生活の中の、ありのままの行動を観察します。彼らの生活を邪魔しないように、興味深かったことや驚いたことをノートなどに記録しましょう。注意深く観察していくうちに、インサイトや新たな機会に気づき始めます。

例えば、自社の製品やサービスについてユーザーから学びたいのであれば、それらをテーマにした話をしてみるのがよいでしょう。買い物の様子を観察したり、製品を実際に使っている様子を観察するのもよいです。彼らの日常生活の中で対話ができる機会があるのであれば、発言からも行動からも学びを得ることができます。


レベル 2: 人々と共感する
2.jpgのサムネール画像人と共感することでさらに"ユーザー中心"になることができます。気持ちをシェアしたり、理解するといった共感によって、実際の生活や経験により近づくことができ、将来求められている製品やサービスのデザインにつなげられるようになります。共感するためには、人を観察したり話をするだけでは不十分です。まず必要なのは、ユーザーの視点に立つためにデザイナー自身の視点から抜け出すことです。その上で自身の視点に戻るといったステップを踏むと、より深い学びを得ることができます(Kouprie and Sleeswijk Visser, 2009)。これを実行するには(自分の視点から抜け出す)勇気、自信が必要になります。

共感のできるデザイナーになるためには、観察だけにとどまらず、ユーザーのライフスタイルや環境に入りこむことがよい経験になります。これによって、新しいライフスタイルの発見にもつながります。また他のアプローチとして、ユーザーの生活を演じ、ロールプレイのテクニックを利用することもできます。バーチャルリアリティーはまだあまり一般的ではありませんが、共感するための新しい方法としては極めて有望です。その代表的な例がTED Talkでの Chris Milkのプレゼンテーション「How virtual reality can create the ultimate empathy machine」で語られています。


レベル3: コ・デザインする
3.jpgのサムネール画像人を招き、パートナーとして一緒にデザインや開発のプロセスを踏むと、より"ユーザー中心"になることができます。このレベルでのユーザーはデザインプロセスにおける参加者として扱います。ここでは参加者とデザイナーとの関係はとても近いので、人間中心のアプローチという べきかもしれません。ユーザー中心のデザインの中でもコ・デザインは特異な手段といえます。というのも、ユーザーの過去、現在、未来の経験を語るうえで、彼らがエキスパートであることをデザイナーとしてしっかりと認識しておかなければならないからです。

共創のプロセスにおいては、参加者が意欲をもって相互的かつ反復的に作る(make)、語る(tell)、演じる(enact)といったプロセスを回していくことが必要です。たとえば、ユーザーを招き、コラージュや、ベルクロモデリングなどの創造的なツールを利用して、未来の経験を視覚化してもらう(make)、そして、彼らにそれをどのように利用するのかを語ってもらう(tell)、さらには、未来のシナリオを設定し、それがどのように彼らの生活の中で使われるのかを演じてもらう(enact)、というようにプロセスを進めることができます。
※このプロセスの詳細は「Sanders and Stappers, 2012」(http://studiolab.ide.tudelft.nl/convivialtoolbox/)を参照し、人とのコ・デザインについての考察に役立ててください。


参照
Kouprie, M. and Sleeswijk Visser, F. (2009) A framework for empathy in design: stepping into and out of the user's life, Journal of Engineering Design, Vol. 20, No. 5, October 2009, 437-448

Milk, C. How virtual reality can create the ultimate empathy machine, TED Talk, April 22, 2015. https://www.youtube.com/watch?v=iXHil1TPxvA

Sanders, E.B.-N. and Stappers, P.J. (2012) Convivial Toolbox: Generative Research for the Front End of Design, BIS Publishers, Amsterdam.

Liz SandersMakeTools 代表

May 30, 2016 06:42 Daily activities for designers to be user centered

What does being "user-centered" mean?
User-centered designers are able to design whatever they are designing, whether that is a product or a service, around how users can actually use the product/service, rather than forcing the people to change their behavior to accommodate the product/service.

There are three levels from which designers can approach user-centered designing. The designer and user become closer to each other as one progresses through the levels. Designers might choose to focus on the level on which they feel most comfortable. Or they might choose to start at Level 1 and then advance to Levels 2 and 3 as they gain experience.

1. Learning from people.
2. Empathy with people
3. Co-designing with people.

 


Level 1: Learning from people.


1.jpgA designer can become user-centered by paying more attention to what people say and do. In Level 1 the people (who might become the users of the product or service) are viewed by the designer from a distance.

To learn from people, listen to what people say. Let them do the talking. The best way to do this is in a face-to face conversation. Have a few questions ready to get the conversation started and then let the conversation go in the way that is the most natural.

Observe what people do as they go about their daily lives. You do not want to intrude on their lives so just watch and make notes later about what was interesting or surprising. Once you start observing carefully, you will notice all kinds of insights and opportunities.

For example, if you are interested in learning from people about your products or services, have conversations with them about your products or services. Or watch them as they shop for and/or use your products and services. If you have conversations with people in their natural environments you will be able to learn from what they say and do simultaneously.


Level 2: Empathy with people.

2.jpgA designer can become more user-centered by learning to empathize with people, i.e., understand them and share their feelings. Empathic designers attempt to get closer to the lives and experiences of their future users in order to design products or services that better meet their needs. Design empathy goes beyond watching people in their natural environments and talking to them. Empathy requires that the designer first step out of their own perspective in order to enter into the perspective of the user. Then the designer must return to his or her own perspective, having been influenced by the stepping into and out of the user's life (Kouprie and Sleeswijk Visser, 2009). It takes courage and confidence to do this.

Some activities that designers can practice to become empathic designers include immersing themselves in the user's environment and lifestyle. This goes beyond observing and becomes a new way of living, at least for a while. Another approach is to use role-playing techniques such as acting out the user's life. The use of Virtual Reality, although still out of reach for many, holds great promise for new ways to empathize with people. A good example of this is the TED Talk by Chris Milk called How virtual reality can create the ultimate empathy machine‬.


Level 3: Co-designing with people.

3.jpg

A designer can become more user-centered by inviting people to partner with him or her in the design and development process. In Level 3, people (who might become the users of the product or service) are seen as participants in the design process. Their relationship to the designer is very close. In fact, I would say that this is better described as a human-centered approach. Co-designing with people is the most extreme form of user-centered design as it means that the designer must recognize that others are the experts when it comes to their experiences of the past, present and the future.

In designing with people you will need to engage them in an iterative and interactive exploration of making, telling and enacting. For example, you might invite users to visualize their ideas for future experience by using generative tools for making such as image collaging or Velcro-modeling. Then you would ask them to share what they have made by telling how they would use it. Or you might ask them to demonstrate how it would fit into their lives by using it as a prop when enacting future scenarios. The interested reader will want to refer to Sanders and Stappers, 2012(http://studiolab.ide.tudelft.nl/convivialtoolbox/ )for more ideas about co-designing with people.


References
Kouprie, M. and Sleeswijk Visser, F. (2009) A framework for empathy in design: stepping into and out of the user's life, Journal of Engineering Design, Vol. 20, No. 5, October 2009, 437-448

Milk, C. How virtual reality can create the ultimate empathy machine, TED Talk, April 22, 2015. https://www.youtube.com/watch?v=iXHil1TPxvA

Sanders, E.B.-N. and Stappers, P.J. (2012) Convivial Toolbox: Generative Research for the Front End of Design, BIS Publishers, Amsterdam.

Liz SandersMakeTools 代表

May 30, 2016 06:41 ロイヤルティ向上に最も影響を与える顧客の"ポジティブ感情"

こんにちは、mctの佐藤です。

先日、510日、Forrester Research社のRyan Hart氏よりmctスタッフがプライベートレクチャーを受けました。テーマは3つ。「カスタマーエクスペリエンスと感情」「未来を記述するカスタマージャーニー」「デザイン思考のこれから」について。本レポートでは、一つ目のテーマを中心にご紹介したいと思います。

カスタマーエクスペリエンス。日本語で言えば顧客経験ということですが、Forrester Research社の考える3大要素、「機能」「使い勝手」「感情」の中で、顧客のロイヤルティを高めるために最も影響度の高いものが「感情」。「感情」面で成功している企業はブランドチェンジされるリスクが1/2、アップセルの確率が5倍、他者にお勧めしてくれる確率が2倍と統計が出ているそうです。レクチャーでは、そのような「感情」面で成功するためのティップスを具体的に教わりました。

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感情を取り扱う上で留意すべきポイントが3つ語られます。

 A:ポジティブな経験より、ネガティブな経験のほうが記憶に残る

 B:記憶に残るのは途中の盛り上がりと、最後の経験のみ

 C:人は、自分の感情を十分に認知・説明できない

 ※AとBは行動経済学系のお話、Cは潜在意識系のお話ですね(佐藤・注)。

 

A(ポジティブな経験より、ネガティブな経験のほうが記憶に残る)ですが、これは、各ステップごとにしっかりとユーザの行動をデザインし、いずれの瞬間にも悪い体験をさせないよう慎重になることが重要と説明されました。特に、顧客の一覧の行動の流れ(=カスタマージャーニー)を顧客の感情も含んだ状態で作成し、施策を考えることが大切。英語では"Emotional Journey"と語られていました。

デルタ航空では欠航の告知メール配布の直後に顧客から電話がかかってきた場合、「ご用件は何ですか?」ではなく、「欠航のお知らせの件でしょうか?」と対応をスタートするようです。同社のアトランタ・オペレーションセンターでは、メカニックスタッフと(空港で取り残された顧客向けの)ホテル予約担当者の席が近く、組織的に顧客へのシームレスな連携対応を実現しているようです。

 

B(記憶に残るのは途中の盛り上がりと、最後の経験のみ)は、悪い経験を経た顧客には、その後に素敵な体験を提供する、という対処法があるようです。上述のデルタ航空では窓側でも通路側でもない"真ん中の席"に特定のクラス以上の顧客が座った場合、翌週の月曜日にお詫びとして同顧客に500ポイント追加進呈するそうです。"Middle Seat Mondays"というプログラム名らしいですが、満足いただけない体験をさせてしまった顧客には最後の最後に良い記憶を残す。

また、スウェーデンでのお話。献血した血液が使用された際、献血した本人に、どのような患者に自分の血が使われたかが連絡されるプログラムもあるようです。この場合も、献血という一連の経験の最後に、ポジティブに心が動かされる経験が配置されている。

 

C(人は、自分の感情を知覚・説明できない)に関しては、mctがよくご提供している絵や写真を使った投影法系インタビュー手法や、広い意味でのニューロマーケティング系の手法が紹介されていました。本人が語れない感情は、少し手の込んだ手段で聞き出す必要があるということ。

 

以上、カスタマーエクスペリエンスにおいて感情面をポジティブに持っていきたい場合、まずはA~Cを押さえることからスタートするということで、非常に分かりやすい整理がなされたと思います。貴社においてもこのような規律あるプロセスを導入し、むやみやたらなアイデア出し・施策立案等を行わない、効率的なプロジェクト進行を図られてはいかがでしょうか。

 

最後に、同日に話があった他のテーマについても簡単にお話します。「未来を記述するカスタマージャーニー」は、現在のカスタマージャーニーを描いてからアイデアを追加し、将来的な理想のカスタマージャーニーを描いていく手法。「デザイン思考のこれから」については、最近1年ほどのデザイン思考のトレンドが語られ、感情を取り扱うテクノロジーの向上による影響などが紹介されていました。

以上、詳しくお知りになりたい方は、どうぞ、mctのほうまでお問い合わせくださいませ。

Takeshi Sato株式会社mct ストラテジスト

【タグ】 Forrester research,

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