BLOG

Aug 17, 2015 02:00 ビジネスモデルデザインの『作法』

■イノベーションの現場で起こる"生々しい"問題

―「株式会社○○ イノベーション推進室 新規事業開発担当の○○です」。

最近、社外の方と名刺交換させていただくと、所属部署名に「イノベーション」や「新規事業開発」といったワードを頻繁に目にするようになってきました。イノベーションや新規事業開発に関わる担当者はクリエイティブ活動に必要な情報やネットワークを欲しており、社外のイベントにもよく参加されています。4人グループで名刺交換したりすると、私以外の全員がそんな担当者だったりすることもしばしばです。実際に多くの企業で新たな挑戦をミッションとした新設のチームが立ち上げられています。既存事業からの脱却や新規事業への挑戦は、ビジネス書の中だけで取り上げられる先進的活動ではなく、多くの企業にとってスタンダードな活動になりつつあるようです。

社内から選抜された期待のメンバーが集まり、バジェットも与えられ、華々しい冒険の始まりに見えるイノベーション活動ですが、現実はなかなかそうもいきません。イノベーションや新規事業が持つ、華やかで挑戦的なイメージとは異なり、実際の担当者の方々から聞かれるのはたくさんの苦悩の声です。
「社長からは何をやってもいいと言われているんですが、何でもいいと言われても...」
「今まで全く違う仕事をしてきたのに、急に新規事業なんてできっこない...」
「とにかく3年以内に結果を出せと言われています...」
「周りの部署からどう思われているのかが心配ですね...」

こういった実態を目の当たりにすると「イノベーションのジレンマ」でクリステンセンが指摘している話よりも、現場はずっと"生々しい"と感じます。このように新規ビジネスの挑戦がうまくいかないのはいくつかの理由があります。もちろんフェーズによって起こり得る問題も異なりますし、解決策もまた様々です。ここではある種の『作法』を身につけることによって乗り越えられるテーマについてお話します。テーマは「ビジネスモデルデザイン」です。

■ビジネスモデルキャンバスという『作法』の必要性

イノベーション活動の現場において、魅力的なアイデアはあっても収益モデルや事業モデルが設計できない、というケースが多く発生しています。ビジネスモデルデザインが課題になっているのです。実際、アイデアから事業設計には大きなジャンプが必要で、具体的には以下のような問題がその難しさの要因として挙げられます。
・事業設計の方法論を知らない
・誰も事業設計などやったことがない
・新しい事業のポテンシャルを明らかにすることが困難
・既存事業のロジックを当てはめてしまう
・アイデア自体が未成熟

これらの問題を解決する『作法』が「ビジネスモデルキャンバス」です。
・顧客セグメント(Customer Segment)
・提供する価値(Value Proposition)
・チャネル(Channel)
・顧客との関係(Customer Relation)
・収入の流れ(Revenue Stream)
・主なリソース(Key Resource)
・主な活動(Key Activity)
・パートナー(Key Partner)
・コスト(Cost Structure)
の9つの要素からなる事業設計のためのツールです。ここではビジネスモデルキャンバスについては詳しく触れませんが、書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書(翔泳社)』をはじめ、オンライン記事などもたくさんありますのでご参照ください。

■現象は構造から生まれる

このビジネスモデルキャンバスを『作法』と呼ぶのには理由があります。ビジネスモデルキャンバスは単にそのキャンバスを埋めて完成させることが目的ではなく、各要素間の関係性やつながり、キャンバス全体の意味や構造を意識する必要があります。なぜならビジネスモデルは生き物だからです。人間の体が多くの細胞による複雑なつながりで成り立っているように、ビジネスモデルもまた全体を一つのシステムとして捉えるという『作法』が必要なのです。

mctでは、6月18日(木)に「ビジネスモデル・ジェネレーション」の翻訳者・小山龍介さんを講師にお迎えし、イノベーションのためのビジネスモデルデザインをテーマにセミナーを開催しました。その中で小山さんは、独特の言い回しを用いながらビジネスモデルの性質を表現されています。一つは「現象は構造から生まれる」という話。顧客が受ける価値や体験といった現象は、それを提供する構造、すなわちビジネスモデルから生まれるという意味です。これもまたビジネスモデルが統合されたシステムであることを前提とした考え方です。また、ビジネスモデルキャンバスにおいて、守(構造化)、破(想定外の変化)、離(再構造化)という考え方にも言及されていました。これは構造化されたビジネスモデルが、一部の要素変化によってビジネスモデル全体が再構造化され、新たなシステムとして生まれ変わることを表しています。正に生き物の進化を表現しているようです。

6.18seminar.jpg

ビジネスモデルキャンバスをうまく使えないといった声もよく耳にしますが、それもこういった『作法』として使いこなすことができていないからだと思います。9つの要素を埋めて完成させるという視点ではなく、キャンバスの構造を意識しながら組み立てることが必要です。またその過程においてはプロトタイピングのマインドセットも大切です。一度完成させたら終わりではなく、要素間の関係性を確認しながら何度も微調整を行い、さらに運用を通じて絶えず修正を繰り返していかなければなりません。生き物としてのビジネスモデルの特性を理解し、『作法』を以てビジネスモデルキャンバスを使いこなせるようチャレンジされてはいかがでしょうか。

※ビジネスモデルキャンバスに興味がおありの方は、お気軽にお問合せください。小山さんを招いてのプライベートセミナー等も実施可能です。

Akihiro Yonemoto株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト

Search検索

Categoryカテゴリー

過去のExperience Magazine

  • 米国マーケティング最新事情 / 瀧口範子
  • デザインテクノロジーの最前線 / 桐山孝司
  • 「本能」から人間を読み解く / 佐藤武史
  • 注目のクリエーターズボイス