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Nov 26, 2019 03:00 mct blog|Narrative & Bias 書籍『他者と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論』を読んで

Narrative & Bias

先月発売され話題の書籍、『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇多川元一著、 NewsPicksパブリッシング)を読みました。すでにいろいろな方が書評やレビューをあげておられますが、mctの組織デザインユニットに所属する身として、また企業の製品・サービス開発のプロジェクトをお手伝いすることが多い身として、受け取る示唆が非常に多い書籍だったので、ここでご紹介させていただきます。

本書の冒頭で、著者は既存の知識・方法で解決できる問題「技術的問題」と、既存の方法で一方的に解決できない複雑で困難な問題「適応課題」という2つの問題が紹介され、組織において起こる問題は後者の「適応課題」であることが多いと述べます。他部署に協力を求めても理解が得られない…などのように、これといった解決策が見つからない問題です。そして、こうした向き合うことが難しい問題を解くための方法として、「対話」というものが紹介されます。「適応課題」は一方的に解決することができない問題であり、組織の「関係性」の中で生じる問題だからです。

 

適応課題に向き合うために、組織内の自分と他者との関係性を見つめ直し、改めるために重要なのが、著者が述べるもう一つの概念、「ナラティブ」です。ここで言う「ナラティブ」とは、解釈の枠組み、ビジネスの世界では「専門性」「職業倫理」「組織文化」などによって生まれる枠組みのことです。「上司たるもの、こういう存在であるべき」「部下ならば、こんな時はこういうふうに振る舞うものだ」といったように、自分たちの行動を、しばしば無意識に規定している枠組みと言ってもいいかもしれません。

私はこの「ナラティブ」という概念を、mctがよく用いる「バイアス」や「フレーム(リフレーム)」という概念と非常に関係が深いものとして読みました。「●●とは、こういうものだ」という思い込みや暗黙の前提を元に話をするため、他者とのわかりあえなさを生み出す…という状況は、「企業視点で考えるあまり、ユーザーに受け入れられる製品やサービスを生み出せない」という、多くの企業が陥っている状況と重なるものがあります。そういう意味でこの本は、単に組織論としてだけでなく、マーケティング論やコミュニケーション論としても読むことができます。


本書の以降では「対話」のプロセスとして、以下の4つのフェーズが紹介され、実践の方法が語られます。

1. 準備:自分のナラティブを脇に置き、相手と自分のナラティヴに溝(適応課題)があることに気づく
2. 観察:相手の言動や状況を見聞きし、相手のナラティヴを探る
3. 解釈:溝を飛び越えて、橋がかけられそうな場所や架け方を探る
4. 介入:実際に行動し、橋(新しい関係性)を築く


具体的な進め方は是非本を読んでいただきたいですが、mctが提供するデザインリサーチも、上のプロセスとよく似たコンセプトで進められます。自分(企業)のバイアスを可視化して問題をリフレームし、相手(ユーザー)を観察して相手の課題やゴールを探り、解決策を考えて実行するー。ユーザー理解とは、ユーザーのナラティブを探ることなのかもしれないな、と思いました。

本書をお読みになり、どう向き合えばいいかわからない問題を解きたい、解く鍵を見つけたいという気持ちがモヤモヤと芽生えた方は、一度mctのメニューをご覧ください。組織開発、組織に限らず様々な課題解決のお手伝いをいたします。相手のナラティブ理解を通じて自分のバイアスをリフレームする、そんな刺激的な体験をご一緒できると幸いです。





他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)
宇田川 元一
NewsPicksパブリッシング (2019-10-04)
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Satoshi Kageyama株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Nov 22, 2019 12:00 Seminar|差別化を図るためのCXマネジメント

 

cxm

いつもありがとうございます。mctの塚田です。
本日はカスタマーエクスペリエンス(CX)に関するイベントのご案内です。

皆様におかれましては以下のような課題を感じられたことはないでしょうか?

✓ 個別のプロジェクトでいくらCXを向上させても会社全体では大きなインパクトを残せない
✓ 1つ1つのアクティビティを変えても会社全体の印象や体験はなかなか良くならない

このような課題にはCXマネジメントの考え方が必要です。
そこでmctでは「カスタマーエクスペリエンスマネジメント」プログラムを開発いたしました。
今回はそのCXマネジメントの考え方やプロセスについて学ぶイベントとなります。

CXを今後の戦略として捉えておられる企業の皆様には大変有意義なイベントになるかと思いますので
是非ご参加ください。


▼詳細・お申し込みはこちらから
 http://media.mctinc.jp/cxm



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Ichiro Tsukada株式会社mct CMO/プロジェクトデザイナー/イノベーションコンサルタント

Nov 01, 2019 09:00 デザイン思考で、課題提起型デジタルカンパニーへの変革を目指す【KONICA MINOLTA Case study Vol.3】

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左からヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部
久保田さん、今村さん、野添さん


取材:池田映子、米本明弘

2017年から、中期計画で「課題提起型デジタルカンパニー」を目標として掲げ、全社的にデザイン思考の考え方を現場に取り入れることを急ピッチで実践してこられたコニカミノルタ社。
単純に一般的なデザイン思考プロセスを導入すればいいということではなく、「コニカミノルタ流」の考えを取り入れながらプログラムを設計することが必要でした。弊社はそのプログラムのコンテンツ開発と実施をサポートさせて頂きました。

この度、こうした取り組みの「仕掛人」であったヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部の皆様が、社内での革新的な取り組みについて表彰されるインナーアワード「Transform Awards」で受賞されたとの一報をお聞きし、ご担当者としてのご苦労や導入のための工夫について、インタビューをさせて頂きました。



取り組みのポイント

✓ トップダウンからの明確なメッセージ
✓ 関連部門の協力
✓ 手法からではなく、マインドセットから取り組む
✓ 自社の特性や業種に合わせたデザイン思考プログラムの開発
✓ デザイン思考プログラムの修正をトライ&エラーでスピーディに行う




今回の記事は「vol.3」です。



若手は顧客のことを、上司は部下のことを、それぞれもっと深く知る文化を育てたい

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―デザイン思考の考え方をインストールするということで、社内文化への影響として期待していたことはありますか?

久保田さん:デザイン思考トレーニングについて考え始めている時に、ちょうどエンプロイー・サーベイがあって、そこで、上司と部下、それぞれの仕事に対する認識に「ギャップがある」という結果が出たんですね。それをより詳しく知るためにワークショップを開いたんです。そうすると、若手メンバーから、「自分たちが作っているものが何の役に立っているのか分からない。分からないままやっているのが辛い」という声が挙がりました。メーカーの中で物作りに関わっている人が、誰のために、何のために作っているか分からないのに何かのデバイスを作り続けるって、とてもモチベーションが下がることなんです。

だから、みんな、もっと現場でユーザーがどう使っているかを知って、「ああだからこうなんだ」と腑に落ちて、仕事に取り組めるようになれたらいいなと考えました。誰かの問題を解決するため、大事なことのために、目の前の仕事をやっているんだと。デザイン思考の技術的なやり方や手段を手に入れるというよりは、そうした考え方をみんなが手に入れることに意味があるんじゃないかなと思っていました。

―仕事の意義について考えるきっかけになればということですよね。

久保田さん:そうです。それに、上司はある程度は仕事の意義は理解しているけど、上司は上司で、部下が何を考えているか分かっていなかった。そのワークショップを通じて、「部下はこう思っているはずだ」と勝手に思い込んでいた、ということに気づけたんです。デザイン思考的に言うと、上司は部下の考えや気持ちに共感できていなかったんですね。

―社外の顧客についてもそうだし、社内に対してのDeep Divingも足りていなかったと。

久保田さん:まだ全然足りていないですね(笑)。若手だけではなく上司にも、相手のことを深く知るという大切さを知ってほしいと思っています。


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mctが企画・実行をサポートした「デザイン思考ブートキャンプ」トレーニング風景

サービスを実現化する時に、もう一度「人間中心」の視点になり、
細かなハードルを越えていかなければならない

―これからの課題だと思っていることについて教えてください。

久保田さん:弊社のようなBtoBの会社がちゃんと効果を出せるようにやっていくために、これまであまり表立って使っていなかった「ビジョン」や「ストーリー」の力を積極的に使っていくことが必要だと思っています。

また、実際に作ってそれを実現化する時のサービスの裏側をどう組み立てるか、そこを考えていかないといけない。実は、デザイン思考のプロセス自体には、世の中を大きく変えるようなイノベーションを生み出すコツは書かれていないと思うんです。思いついたアイデアが本当にサービスとしてお客様に受け入れられるかどうか、つまりお客様との接点づくりについては、自分たち自身がもっとシビアに考えて実現化していかないといけない。すごいアイデアが出たよ、はい作ってローンチ、じゃうまくいかない。末端のところで見落としているちょっとしたハードルに気づかないから、お客様に受け入れられないパターンも結構あるのかなと思っています。

例えば、以前にカフェにプリンターを置こうというアイデアが出たことがあるんです。確かにカフェで仕事をしている人は多いし、そこで書類を印刷して客先に持っていくというニーズもありそうです。でも実際にはあまり実現化されていない。

コンセプトはいいんだけど、スタバにそれを置くとせっかくの雰囲気が壊れるとか、一人で仕事をしている時に、パソコンをテーブルに置きっ放しでプリントを取りに行くのは心配だとか。そうした些細な懸念点やステークホルダーである店側の問題について、どこまで考えられていたのかと。最後の最後までつきつめてクリアしないと、アイデアの実現って、できないんですよね。

今村さん:そうですね。課題を見つけてアイデアを出すところで終わらせるのではなく、社会の中で使ってもらうにはどうしたらいいかを人間中心で考えていく。これからは、それがより必要ですね。


社内のステークホルダーの協力を得て、多角的な視点からサービスを組み立てていく

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―今後の展望について教えてください。

野添さん:今年度はまさに、サービスの組み立ての部分に力を入れていて、社内組織の運用の仕方やKPIの立て方も見直そうとしています。あるプロジェクトでは、サービスの詳細を設計する時に、企画部門のメンバーが声を掛けて関連する営業職やカスタマーサポートのメンバーに参加してもらうこともあります。

―具体的にはどういうことをしているんでしょうか?

野添さん:私たちデザインセンターがファシリテートして、メンバーのみなさんでサービスブループリントを描いたりしています。例えば営業部門の方にヒアリングしながら、今の営業活動の実態を全部書き出して、顧客との関係でどこがうまくいっていないのか、課題を貼り出して、共有して、重要なタッチポイントをより良くしていく、ということに取り組んでいます。

―営業メンバーが企画から入ってくれることで、内容をしっかり分かって売りに行ってくれるという効用もありますね。

野添さん:そうですね。それに、お客様にコニカミノルタのファンになってもらうには1回売って終わりではなく、継続的に価値を提供していく必要があります。多様な部門の協力を得ながら、顧客体験を向上するためのアイデアやストーリーをよりリアルなものにしていきたいと思っています。

久保田さん:教育の観点では、今までは各部門から手を上げてくれた人に教育をしていましたが、部門ごとに教育するということも考えているところです。部門の中で一人だけが動こうとしても、周りのメンバーが動かないと、結局何も動かないということもあるので。各部門の中でのキーマンを見つけていくという活動とともに、その上司側がブレーキをかけないように、全体としての理解度を高めるということも考えていきたいと思っています。

―今日は、本当に勉強になりました。ありがとうございました!



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▼コニカミノルタのデザイン(外部のウェブサイトに移動します)

https://www.konicaminolta.com/jp-ja/design/index.html


【関連記事】
組織へのデザイン思考導入事例 - サントリー食品インターナショナル様
なぜ組織にデザイン思考が必要なのか? -1-
なぜ組織にデザイン思考が必要なのか? -2-

 

Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Oct 30, 2019 10:03 デザイン思考で、課題提起型デジタルカンパニーへの変革を目指す【KONICA MINOLTA Case study Vol.2】

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左からヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部
久保田さん、今村さん、野添さん


取材:池田映子、米本明弘

2017年から、中期計画で「課題提起型デジタルカンパニー」を目標として掲げ、全社的にデザイン思考の考え方を現場に取り入れることを急ピッチで実践してこられたコニカミノルタ社。
単純に一般的なデザイン思考プロセスを導入すればいいということではなく、「コニカミノルタ流」の考えを取り入れながらプログラムを設計することが必要でした。弊社はそのプログラムのコンテンツ開発と実施をサポートさせて頂きました。

この度、こうした取り組みの「仕掛人」であったヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部の皆様が、社内での革新的な取り組みについて表彰されるインナーアワード「Transform Awards」で受賞されたとの一報をお聞きし、ご担当者としてのご苦労や導入のための工夫について、インタビューをさせて頂きました。



取り組みのポイント

✓ トップダウンからの明確なメッセージ
✓ 関連部門の協力
✓ 手法からではなく、マインドセットから取り組む
✓ 自社の特性や業種に合わせたデザイン思考プログラムの開発
✓ デザイン思考プログラムの修正をトライ&エラーでスピーディに行う




今回の記事は「vol.2」です。



「なぜ今、デザイン思考に取り組む必要があるのか」、
導入部分での動機付けが必要だと学んだ


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―デザイン思考の考え方を学んで頂くことについて、受講者の方にはすんなり受け入れられたのでしょうか?

今村さん:「そもそもなんでデザイン思考って、デザインという名前がついてるんですか?」といった疑問からはじまり、我々デザイナーが当たり前に考えて深く考えてなかったことについて色々質問や意見がありました。それらを聞いていく中で、ただデザイン思考の方法論だけ教えていてもダメだと教育プログラムを組み替えたんです。導入のところで、「我々がなぜデザイン思考をやる必要があるのか」という動機付けの部分をしっかり語った方がいいと。

まず、世の中の潮流を大局的に捉えてもらうために、GAFA を中心とするプラットフォーム企業が、なぜ市場を席巻し、企業価値を高められたのか、ビジョン・ミッション視点から話をすることにしました。ビジネスパーソンにはわかりやすいかなと。例えばグーグルだと「世界中の情報を整理し、世界中の人々が無料でアクセスできて利用できるようにする」と。技術の話は言ってない。人間中心のミッションです。アマゾン、フェイスブックも人間中心のビジョン・ミッションを掲げています。

では日本の企業はどうですかと。今やどの日本企業も世界の時価総額ランキングで30位にも入っていない。このままだとどんどん世界の経済成長に後れをとっていってしまう。まずは社員一人ひとりが徹底的に人間中心のマインドを持たなきゃいけないということを教育の最初に言うようにしたんです。そうすると、そこで「なるほどね」と感じてくれた人も結構いて。とにかく危機感を持ってほしかった。

―全体のプログラム構成も、3段階で、段階的に学べるよう工夫されていましたよね。

今村さん:教育って山を登るようなもので、いきなり8合目から大事なことを言っても、山のふもとにいる人には響かない。まずは「デザイン思考概論」でデザイン思考のことを知るところから始めて、意義やマインドセットを伝えて。それだけでも1日かかる。それができたら、2日間の「ブートキャンプ」で、5名程度の最小単位のチームでファシリテーションを含めて創造性を高めるワークをやってみる。そのあと更に学びたい方には、「スキル学習」でインタビューやジャーニーマップの書き方、プロトタイピングなどのスキルセットが学べる機会を提供する。手法だけをいきなり教えたとしても響かないので、段階的に山を登っていけるように考えました。

これは実は、社内で我々が中心となって開発している顧客をファンにする「魅力」を生み出すためのサービス開発の方法論を応用しているんです。顧客のステージを、認知、導入、継続利用の3つのステップに分けて各ステージに応じて顧客に寄り添って魅力を提供していこうという考え方なのですが、教育にもその考え方は効果的なんです。

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デザイン思考について知識のない受講者でも段階的に学べるような教育プログラムを構築



―ここでいう参加者の皆さんが「顧客」で、最後はデザイン思考のファンになってほしいと。
デザイン思考を組織にインストールするプロセスに、まさにデザイン思考の考え方を使っているということですね。

今村さん:使っていますね。デザイン思考のファンになってほしい。大上段に構えて上から教えてもモチベーションは上がらないですからね。「デザイン思考」というラベルにはこだわっていなくて、一人ひとり、さらにはチームの創造性を高めるという大目的に共感して、我々の取り組みそのもののファンになってほしい。さらにはインフルエンサーになってもらいたい。教育プログラム自体も、やりながら繰り返し、繰り返し修正をかけているんですね。それもデザイン思考のやり方かなと。フィードバックをもらってすぐ修正をかけて、次の講義に反映しています。

―今はどれくらいまで目標達成できたと感じられていますか?

今村さん:まだまだ道半ばというか。山でいうと3合目くらい。2018年度に一通りのプログラムが出来上がって、全プログラムを一気通貫して実施するというのが2019年度なので、ようやく土台ができたかなと。これもプログラムができたらそれで終わりではなく、進化させていかなくてはいけないし、教育の質も高めていってデザインシンカーを増やしていかないといけない。スピーディーにやっていかないといけないと思いますね。

野添さん:一通りの土台となる、理論はできました。真の浸透という意味では、これからはやはり現場での実践を通じて実践知を高めていくことが課題だと思います。教育を受けた一人ひとりが、実践をしていく上での見本となれるように地道に支援していく必要があると思っています。


組織的な協力がなければ、ここまで辿り着くことはできなかった

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―御社のように規模として大きい企業が、継続的、構造的にデザイン思考のインストールに取り組むに当たって、苦労した点はありましたか?

今村さん:うーんそうですね…、規模が大きくてかつ中長期的な活動になると、なぜそれをやるのか、明確なメッセージにできるかどうかが大切です。トレンドだから、他社がやっているから、というのは本当の意味で組織を動かす力にはならないと思います。人やお金などのリソースも使うので、経営視点で中期計画と我々の活動をどうやって効果的に紐づけて考えていくのか。そこを意識してやってきました。

中期計画の中でも、弊社のように製造に強みのある会社は技術戦略がとても大事なんです。技術部門にはMOT(Management of Technology)をベースとした新規事業を生み出すための「KM way」という考え方があるのですが、その枠組みとリンクさせて考えていく。また、全社的な教育の場である「コニカミノルタカレッジ」の中で効果的に教育する人財を集める。すでにある社内のアセットを活用しながら、コーポレート横断組織とうまく連携しながらやっていくことを意識しました。1つの部署だけ単体で頑張ってもなかなかスケールしていかないので。

― 一部門単体の活動では、ここまでやりきることはできなかったと。

今村さん:ありがたいことに、技術、人事、経営企画を担当する部署の人たちがとても協力してくれたんですね。その協力がないと、スケール的に大きく、中長期的に実施するのは難しい。また、「事業部門でもデザイン思考を取り入れてやらなきゃ」という意識づけがトップダウンで行われたので、やりやすい部分は非常にありました。トップダウンだからこそこうした活動が成り立っている部分は多分にあります。会社の経営方針、各部署の方針と足並みをそろえながら親和性を高くやっていくことが大事だと考えています。

また、私が所属しているデザインセンターのトップはグループ業務執行役員でもありますから、これからやろうとしていることについて経営トップ層との共有が行われたり、経営的観点からのフィードバックを直接もらったりすることができました。経営層とも対話をしながら、教育プログラムづくりや浸透計画を練られたことは大きかったと思います。




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【関連記事】
組織へのデザイン思考導入事例 - サントリー食品インターナショナル様
なぜ組織にデザイン思考が必要なのか? -1-
なぜ組織にデザイン思考が必要なのか? -2-

 

Eiko Ikeda株式会社mct エクスペリエンスデザイナー

Oct 28, 2019 10:05 デザイン思考で、課題提起型デジタルカンパニーへの変革を目指す【KONICA MINOLTA Case study Vol.1】

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左からヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部
久保田さん、今村さん、野添さん


取材:池田映子、米本明弘

2017年から、中期計画で「課題提起型デジタルカンパニー」を目標として掲げ、全社的にデザイン思考の考え方を現場に取り入れることを急ピッチで実践してこられたコニカミノルタ社。
単純に一般的なデザイン思考プロセスを導入すればいいということではなく、「コニカミノルタ流」の考えを取り入れながらプログラムを設計することが必要でした。弊社はそのプログラムのコンテンツ開発と実施をサポートさせて頂きました。

この度、こうした取り組みの「仕掛人」であったヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部の皆様が、社内での革新的な取り組みについて表彰されるインナーアワード「Transform Awards」で受賞されたとの一報をお聞きし、ご担当者としてのご苦労や導入のための工夫について、インタビューをさせて頂きました。



取り組みのポイント

✓ トップダウンからの明確なメッセージ
✓ 関連部門の協力
✓ 手法からではなく、マインドセットから取り組む
✓ 自社の特性や業種に合わせたデザイン思考プログラムの開発
✓ デザイン思考プログラムの修正をトライ&エラーでスピーディに行う




今回の記事は「vol.1」です。


取材にご協力いただいた コニカミノルタ株式会社様
もともとカメラ・写真フィルムメーカーとして創業。そこで140年間培った4つのコア技術「材料・光学・微細加工・画像」のシナジーを発揮させ、現在ではオフィスサービスからヘルスケア製品、プラネタリウムまで、多彩なビジネスを展開しています。モノの提供に留まらず、デジタル技術を駆使し、世界中のお客様や社会の課題提起とその解決を目指すデジタルカンパニーです。

「Transform Awards」とは
同社内で毎年実施されている表彰イベント。顧客価値創造につながるプロセス刷新や組織文化の変革にチャレンジする活動にフォーカスして、まだ取り組み中であっても、価値があり、これからも更に加速することが期待される活動に対して表彰する。世界中のグループ会社より応募があり、ファイナリストの全社員に向けたプレゼンを経て、最終的な受賞はわずか4つのプロジェクトに絞られる。



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プレゼンテーションの様子

「あなたは自分のことをクリエイティブだと思いますか」という問いに、
全員手を挙げられるようになってほしい

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―この度は、トランスフォームアワードでの受賞、おめでとうございます!
今回受賞されたオーディエンス賞について教えてください。

今村さん:このトランスフォームアワードは、全世界の拠点でファイナリストのプレゼンテーションが中継されていて、コニカミノルタの社員が1人1票、投票できる仕組みなんです。社長賞、銀賞、銅賞の他に、オーディエンス賞という特別賞もあり、聴講者からの投票によって評価が最も高かったものが選ばれます。幸いにも今回はこのオーディエンス賞を受賞することができました。

―聴いている人からの評価が高かったんですね。

野添さん:笑いが起きていましたよね。面白かったんですね。
今村さん:笑わせるつもりは毛頭なかったんですけどね(笑)。
我々は本格的に2年前くらいからデザインシンキングの浸透に取り組み始めたのですが、プレゼンは2018年度からデザイン思考の体系化と教育プログラム構築を中心に組み立てました。全社的な取り組みとして、社内にデザインシンキングを浸透させ文化にしていくストーリーを意識して話しました。

僕たちが取り組んでいるのは、一般的なデザインシンキングの浸透ではなくて、コニカミノルタ流の行動指針となるようなデザインシンキングの体系化と浸透です。Deep Diving(ビジョンを描き課題を提起する)、Creative Dancing(試行錯誤しながら顧客と価値共創する)、Service Crafting(顧客をファンにするサービスをつくる) からなる3つのオリジナルの型をつくりました。2017年度から中期計画で会社が掲げている「課題提起型デジタルカンパニー」というビジョンを実現するための行動指針としてこの型をつくってきました。

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コニカミノルタ流の行動指針となるデザインシンキングの型を構築


―プレゼンテーションの中で、一番伝えたかったことは何だったんでしょうか。

今村さん:デザイン思考教育の中でも常に問いかけているのですが、今回のプレゼン中でも「あなたは自分自身がクリエイティブだと思いますか?」という問いを投げかけて、会場にいる人に手を挙げてもらったんです。そうすると、大抵みんな手を挙げない。社長の山名さんは率先して挙げてくれたので良かったんですが(笑)。

この問いは、我々がデザインシンキングに取り組む理由を明確にするための根源的な問いです。僕たちは、コニカミノルタの社員全員が、この問いに対して自信をもって、自分はクリエイティブだと「はい」と手を挙げられるようになってほしいと思っています。実際にデザイン思考のトレーニングを受けてもらった後に「クリエイティブになったと感じましたか?」と問い直すと、ポジティブな感覚に変わってくれる実感があるんですね。ビジネス環境が大きく変わり、顧客起点にサービスを考えることの重要性が高まってきている現在、一人ひとりの創造性が高まり、自信を持つことが大事だと考えています。

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デザインシンキングのトレーニング後に参加者に問いなおすと、
自分の創造性に対する感じ方がポジティブな感覚に変わった


―いきなりチームがというより、まずは一人ひとりの創造性が高まると言うことが大事だったんですね。

今村さん:日本人は組織でうまくやると言うのは当たり前にうまくできていると。逆に言うと組織でうまくやろうとすればするほど、型にはまっていって自分を出してはいけないんじゃないかとなって、どんどん規則に縛られ受け身になっていく。世の中全体として、そうなりすぎている気がするんです。とくに大企業は。デザイン思考はチームで創造性を高めることにフォーカスしていますが、逆説的にチーム力を高めるためには個の力を高めていく必要があると思っています。ただ、独りよがりにはなっちゃいけないと思っています。


モノ売りから、コトの価値を売る会社への変革が急務だった

―そもそも御社がデザイン思考を取り入れることになった背景、課題としてはどういうことがあったのでしょうか?

今村さん:今我々が抱えている大きな課題は、モノ売りから価値(バリュー)を売っていく会社にトランスフォームしていくことです。そのためには、社員全員が徹底的に人にフォーカスをして、その人が困っている課題、その人がどうしたいのかを深く考える力が大事になってくる。そこで、デザイン思考のマインドセットとスキルを活用していこうと、社長と担当役員であるデザインセンター長を中心とした経営層がデザイン思考の全社浸透を経営課題として位置づけました。

野添さん:2017~2019年の中期経営計画での目指す姿は「課題提起型デジタルカンパニー」で、顧客の価値を創造するということが、経営方針になっています。会社としてもコト売りへのシフトを掲げていますよね。


―「デザイン思考」という言葉というよりは、人にフォーカスして課題を解決するという中身が大事だったんですよね。

今村さん:そうです。人間を相手にすると、「このソリューションで全て解決」みたいな一点突破でいくのは難しい。こういう状況ではこの解決策でいいけど、お客様の状況が変われば、全然違うニーズが出てくる。自分たちの提供する価値は何か、どういうソリューションが必要なのかをお客様に寄り添って継続的に考えていかなければならない。それを迅速にやるには、デザイン思考の考え方が非常に有効なんじゃないかと。

さらに、BtoBになると、複雑なステークホルダーの中で誰にどんな価値を提供すればいいのかも考えなくてはいけない。この技術を使ってこういう商品つくります、みたいな最初からプロダクトアウトでガッチリ決めてやっても、BtoBのビジネスで成功するのは難しくなってきていると思います。

だから、お客様と対話をしながら一緒に課題と解決策を考えていくような形にしていくと。我々が現在取り組んでいるプロダクションプリンティング領域における新サービス創出プロジェクトでも、お客様と密に対話しながら、お客様の置かれている業務環境の理解から始まり、課題の特定に力をいれて、その上で解決策を考えるようにプロジェクトの流れをつくっています。


― 一方的に提供というよりは、共創に変わっていかないといけない。


今村さん:共創するときに特に大事になるのが、対話力。対話とはただ相手と意思疎通するというようなことではありません。対話というと言葉を使った言語的なコミュニケーションをイメージしますが、僕はお客様の現場の中に入って観察したり自ら体験することも対話の一部と考えています。観察や体験から得られた主観的な意識を相手にぶつけて、共通理解をつくっていく。この営みが対話です。真の対話は人と人との共感につながっていきます。言語的な抽象的な概念だけのやり取りからは共感は生まれないと思いますし、この共感という概念が人間中心の考え方の土台だと思ってます。




→ Vol.2に続く


▼コニカミノルタのデザイン(外部のウェブサイトに移動します)
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/design/index.html


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